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「名言との対話」11月12日。福田みどり「僕たちは弱点で結ばれたんだから、毀れることないよ」

福田 みどり(ふくだ みどり、1929年(昭和4年) - 2014年(平成26年)11月12日)は、作家司馬遼太郎夫人。

司馬遼太郎の没後は、司馬遼太郎記念財団理事長に就いた。

今まで「名言との対話」で多くの人の生涯と名言を書いてきた。作家の場合、その資料は自伝や作品を読むことになる。その過程で配偶者や、子どもがその人を回顧する本を手にすることがある。作家の日常と本音がみえるので、私はできるだけ読むようにしている。

愛読している司馬遼太郎の明るい日本史を堪能してきたし、洒脱なエッセイもよく呼んできた。また東大阪の司馬遼太郎記念館で時間を費やしたこともある。

今回は、『司馬さんは夢の中Ⅰ』を読んで、夫人福田みどりさんからみた司馬遼太郎を堪能した。

みどりは司馬さんは「 ヘンな人」という見方をしている。妻から見ればどんな偉人も変な人なのだろうが、みどりさんの「ヘンな人」という言葉には愛情がある。

司馬さん。独特の透明感。道に迷っても絶対に人に尋ねない。服装に無頓着。時間の無駄。過去を振り返ることを極端に嫌った。極端な寂しがり屋。尋常ならざる風邪恐怖症。就寝ファッション。バンダナ、腕カバー、脚絆、靴下、」、、。照れるとあらぬことを口走る癖。机の引き出しのキタナイ人。冷ややか態度。記念館には透明感と清涼感がある。、、、。

1970年の仕事量についても書いている。産経「坂の上の雲」、朝日「花神」、週刊朝日「世に棲む日々」、週刊新潮「城塞」、小説新潮「覇王の家」、オール読物「話のくずかご」、、、。しかし40歳前後であった司馬本人はいらだつこともなく普通に暮らしていた。このあたりは、やはり超人的なエネルギーを感じさせる。

以下、みどりさんが「安藤忠雄さんの設計で建物の隅々まで、透明感と清涼感が漂っている」という司馬遼太郎記念館を訪ねたときの私のブログから。

「日本史を独力で書き換え、戦後の日本人に誇りと自信を植えつけた司馬遼太郎の記念館を東大阪市に訪ねたとき、自宅の玄関には「司馬遼太郎(福田)」との表札があり、みどり夫人が住んでいる裏の表札には「福田(司馬)」とあった」。

「コーヒーを飲みながら受付で買った「以下、無用のことながら」というエッセイ集を読んでいると、あの優しい眼差しの司馬遼太郎が傍らにいるような不思議な柔らかい感覚があった。そしてたしか「遼」という雑誌にあった「もっとちゃんと考えな、あかんで」(誰かに言ったことば)という声が聞こえたような気がした」。

二人は産経新聞の同僚だった。トモダチからコイビトになって、結婚してしまう。結婚式も披露宴もしていない。一枚の写真もない。 「僕たちは弱点で結ばれたんだから、毀れることないよ」は、夫の司馬遼太郎の言葉だ。期待もないから期待外れもないということだろうか。こういう結婚もあるのかと少しおかしくなり、大作家に親しみを感じる。

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