「名言との対話」4月27日。曾和博朗「音を出すのは右手、鳴らすのは左」
曾和博朗(そわひろお 1925-)は 昭和-平成時代の能楽師小鼓方。
「名言との対話」4月27日。曾和博朗「音を出すのは右手、鳴らすのは左」
曾和博朗(そわひろお 1925-)は 昭和-平成時代の能楽師小鼓方。
京都生。小鼓方幸(こう)流の三代目。曽和脩吉の長男。祖父鼓堂、そして東京で幸祥光に2年半師事。6歳6月6日から稽古をはじめ、10歳で「小鍛冶(こかじ)」で初舞台を踏む。18歳で「道成寺」を披く。曲の趣をいかした的確な演奏で知られる。1998年、重要無形文化財保持者各個指定(人間国宝)に認定される。京都能楽養成会で後進の指導にもあたる。現在、現役最高齢の能楽師囃子方。本日で96歳。
公益社団法人能楽協会は各専門的役割を職能とする各流の能楽師で構成され、2020年現在で1100名が正会員になっている。シテ方五流、ワキ方三流、小鼓方四流(幸・幸清・大倉・観世)、太鼓方五流、太鼓方二流、狂言方二流で構成されている。
能楽には能と狂言があり、オペラとコントというとわかりやすい。能は世阿弥が集大成した幽玄の世界である。
能楽師には、シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方(笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方)という職掌があり、各方はそれぞれに流儀がある。
大鼓は皮を乾燥させるため打つと「カーン」という音がする。小鼓は皮を湿らせているので「ポ」「プ」「チ」「タ」と奥行きのある音をだす。大鼓は「陽」を意味する奇数拍を主に受けもち、小鼓は「陰」とされる偶数拍を受け持つ。
小鼓方の人間国宝である曾和博朗は、インタビューに以下のように答えている。
・「道行」は字のごとく「道を行く」ことで、転じて「旅をする」という意味をもつ。舞台に登場した人物は、地名や風景などを並べた文を謡うことにより、旅の目的地に到着したという空間移動を舞台上で実現させる。綴られた詞章の美しさは、日本文学の紀行文(道行文)の伝統によるものといわれ、観客はその旅路を想像し、物語の世界へと誘われていく。
・一人だけ良くてもだめで、全部が揃わないといけない。もちろんシテ方、地謡がしっかり謡ってくれないと、われわれは打てませんわ。
申し合わせをしても、本番はそれとは違うことがあります。速さ、呼吸がある。どうくる?じゃあ一発こうやってやろうか、とかね。それがまた面白いところなんですよ。
・「音を出すのは右手、鳴らすのは左」。もちろん右手も強弱ありますが、左手の締め具合。鳴り物というには、鳴らないといけないです。胴の蒔絵も「実(み)」(実が成る)や「神鳴」みたいなのも多いですね。いつもいい音でないといかん。やっぱり、『羽衣(はごろも)』らしい調子とか、『高砂(たかさご)』らしい調子とか、そういうのが出てこないとだめですね。
能についてはギリー倶楽部などで何度か、観る機会があったが、演じるシテやワキに気を取られて、囃子方は目に入っていなかった。次の機会には、全体に目を配ることにしよう。
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