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「名言との対話」11月22日。出井伸之「人は組織からの引退や卒業はありえても、自分自身から引退することはできない」

出井 伸之(いでい のぶゆき、1937年11月22日 - )は、日本の実業家。

早稲田大学政経学部卒。ソニーに入社。オーディオ事業部長、コンピュータ事業部長、ホームビデオ事業本部長などを歴任後、1989年取締役、1995年社長、2000年会長。2005年クオンタムリーブ株式会社を設立。

ソニーのトップを10年つとめたこの人の言葉を拾ってみた。

『裏番組』や趣味を持つ人は、ビジネス以外の話も面白く、幅広い視点をもっていますから、会社でも人が寄ってきますし発想力も豊かです。『OFF』での蓄積が、いつの間にか会社の仕事(『ON』の世界)にも環流して、『よい循環』が生み出されてゆく

・井深(大)さんをはじめとしてファウンダー(創業者)は会社の精神的支柱です。会社が生まれてきた素、DNAみたいなものですから、その精神に敬意を表さないと、会社がおかしくなってしまうと思います
・社長になるとは必ずしも思っていなかったが、社長のように考えていた。
・私がメディアに出て話をするのは「社内」へのメッセージなのだ。
・いまの問題点をわかりやすくビジュアル化して、社員の頭の中に焼きこむことは、経営者の重要な仕事だと思います。、、社長としてのこの三年間、難しいことをいかに簡単に説明するかということを心掛けてきました。

『変わり続ける』(ダイヤモンド社)を読んだ。サブタイトルは「人生のリポジショニング戦略」だ。ソニーのトップを退任して10年経った70代後半の時点での著書である。

自分が置かれている環境を意識的に変えながら、自身を進化させていくことがリポジショニングだ。出井は「人生の中で、何度もリポジショニングをしてきた」という。自身の経験を踏まえ、下がっていくクリエイティブマインド「才能」と上昇する分別心の交点が45歳だという。「事業部長がいちばんやりがいがあって楽しかったですね」というように、その時代を楽しんだのだ。

出井は「図形を使って物事を多面的に考える」人であることを初めて知った。マクロの視点とミクロの視点を自動的に考えさせてくれるツールとして「マンダラチャート」を30年近く使っている。鳥の目、虫の目、魚の目を意識している。「図形を使うことで、物事を多面的に見ることができるのだ」と述べている。

時間については、仕事の時間、家庭の時間以外の、1人になってじっくり考える時間が重要と考え、自覚的に第3の時間をつくっていたのは参考になる。私のいう公人、私人ではない「個人」を維持する時間である。

出井は読書魔であった。「眠る前の一時間の読書時間が、私にとってはとても楽しみな時間です。出張中は移動時間が多いので読書が進みます」という。新しい分野に遭遇するたびに読んだ本の著者に手紙を書き会いに行くという行動をしていた。こういう習慣を身につけた人を何人か私も知っているが、みな大したものになっているという印象だ。

「三年過ぎたらポジションをかわる、それを三回やったら次は全く違うところへ行くという具合に、どんどん動いてきましたね」というようにサラリーマン時代は「変化」が信条だった。

「人は組織からの引退や卒業はありえても、自分自身から引退することはできない」。ではどうするか。「これからの時代は、変われる人しか生き残れない」というように、組織を離れた後も「変化」を貫いているようだ。あざなえる縄のように環境の変化と自身の変化を楽しんでいきなさいというメッセージを受け止めよう。人生に引退はない。

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