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「名言との対話」8月19日。降旗康男「失敗したとか負けた人とか、そういった人たちを描くのが映画だ」

降旗 康男(ふるはた やすお、1934年8月19日 - 2019年5月20日)は、日本の映画監督。

祖父、父ともに代議士である長野県の名門に生まれる。松本深志高校から東大文学部仏文科卒業。1957年東映に入社するが、労働争議に熱中。共産党支持者だった。1966年東映京都所長の岡田茂が「非行少女ヨーコ」で監督に起用する。

時代劇はやりたくない、成功者の映画は撮りたくないと主張し、一時干されてテレビの演出も多数行った。

高倉健とは1966年の「地獄の掟に明日はない」で出会う。1974年にフリーとなり山口百恵主演「赤いシリーズ」などテレビ映画を多数担当した。1978年、「冬の華」で東映ヤクザ映画に復帰し、高倉健とのコンビを続けて20本撮っている。1999年に高倉健主演「鉄道員」で、日本アカデミー賞監督賞・脚本賞を受賞する。

高倉健とのコンビで「新網走番外地」シリーズや「冬の華」「駅  STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」「あ・うん」などを監督し、ヒットさせる。

高倉健を評して「2度、同じ事は出来ない俳優。面倒くさい俳優だが、面白い俳優だと思う」とインタビューで語っている。若い頃の高倉健の仁侠映画は同じことの繰り返しだったことに同情している。「脚本のどこか1行に、背筋がぞくっとするようなものがあれば、僕はその1行を頼りに出演を引き受ける」と高倉健は語っていたそうだ。単なる美形のスターから生まれ変わった。不器用だと自覚して、考え抜いて演技をした。「どんな役の人物の中に高倉健がいる」。

2002年「ホタル」で芸術選奨。2013年、「あなたへ」で日本アカデミー賞優秀監督賞。80歳を越えてからもメガホンをとった異色の映画監督である。

インタビュー映像をみた。「失敗したとか負けた人とか、そういった人たちを描くのが映画だと思っている。映画は、自ら状況や境遇の不運を引き受けてしまう“不幸な人”、自ら幸せや幸運を捨てて行く人たちを描くもの、そこでの人間の人間らしさ、悲しさや美しさを描くのが映画じゃないかと思って、これまで撮り続けてきた」

『永遠のゼロ』で主役を演じた岡田准一を人間に内在する“陰”を演じきれる、いまの日本映画界では数少ない主演俳優だと思って起用している。

シャイでク口数は少なかったといわれるように、インタビュー映像では、含羞をみせながら、トツトツとゆっくり喋るのが印象的だ。静かな人である。

降旗康男監督には48作品がある。失敗、敗北、不運、不幸、陰、悲しさ、その人たちの美しさを描いたこの監督の映画は「網走番外地」くらいしか見ていない。これを機会に「鉄道員(ぽっぽや)」、「ほたる」「あなたへ」などをみたい。

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