「名言との対話」10月17日。アーサー・ミラー「一生働きつづけてこの家の支払いをすませ、やっと自分のものになると、誰も住む者はいないんだな」。
アーサー・アッシャー・ミラー(Arthur Asher Miller, 1915年10月17日 - 2005年2月10日)は、アメリカ合衆国の劇作家。
ニューヨーク生まれ。ミシガン大学在学中、戯曲で賞をとる。1947年「みんな我が子」でニューヨーク劇評家賞を受賞。1949年「セールスマンの死」でニューヨーク劇評家賞、ピュリッツアー賞などを受賞し、一躍世界的劇作家となる。その後、「るつぼ」(1953年)、ピューリッツァー賞受賞作「橋からの眺め」(1955年)などを発表。
他に「ビシーでのできごと」、「代価」、「悲劇と平凡人」などがあり、時空間の工作という舞台技巧を駆使する実験的劇作家でもあった。
私生活ではマリリン・モンローと結婚し、そして離婚したことで話題になっている。
代表作の『セールスマンの死』(ハヤカワ演劇文庫)を読んだ。
敏腕セールスマンで鳴らしたウイリー・ローマンも、得意先の知り合いが引退し、成績が上がらない。帰宅して妻から聞かされるのは、家のローンと保険、車の修理費の請求だ。前途洋々だった息子も定職につかずこの先どうしたものか。夢に破れて、すべてに行き詰まった男が選んだ道とは、、、。
主人公(ウイリー)
一生働きつづけてこの家の支払いをすませ、やっと自分のものいなると、誰も住む者はいないんだな。
人に好かれれば、困ることはない。たとえば、わしだ。
大物なんだぞ、おれは!
一生に一度でいいから、こわれないうちに払いきって、ちゃんと自分のものしてみたいよ!これじゃいつも、ゴミ捨て場と競争しているようなもんだ!私が払い終わるころには。車はくたばる。冷蔵庫は狂ったようにベルトをすり減らす。ちゃんと時間をみはからってやがる。払いきったとたん、寿命がくるってしかけなんだ。
わたしは36年間、この会社のために働いたんだ、なのに、保険料をさえ払えないんだ!
ものをいうのは、顔がきくか、にっこり笑って相手をつかむか、です!つまりコネ、コネですよ!
人間、生まれたからには、そのままでは死ねませんよ、何かを残さなくちゃね。
妻(リンダ)
なぜ、誰もが世界を征服しなけりゃならないの?
家の最後の支払いは、今日すませました。今日ですよ。でも、もう住むひとはいない。、、、これで、自由になったのよ。、、、借りも、、、払いも、、、なくなってね、、、
息子(ビフ)
二週間の休暇のために、一年五十週間を身を粉にして働くわけだ。
どうしてもつかめないんだよ。これという価値が。
おれは人の頭に立つような人間じゃないんだ。あんただってそうだ。足を棒にして歩く注文とりにすぎないんだ。とどのつまりは、ごみ箱にほうりこまれるのがおちさ!、、、おれは1時間1ドルの人間だ!
お父さんは、悪い夢を見ていたんだ。とんでもない見当ちがいの。
家族・仕事・老いなど現代人が直面する問題に斬新な手法で鋭く迫り、アメリカ演劇に新たな時代を確立した作品である。
だれのまわりにもいるような身近な姿、使い捨てのセールスマン群、を的確にしかも冷ややかに、距離感をもって描いている。アメリカンドリームが持つ問題を指摘した作品だ。
この作品は、発表当時の1949年以外に、3回のリバイバルがあった。1975年、1984年、1999年である。主人公のウイリーというセールスマンが吐く道徳と虚勢と本音が入り混じった言葉には誰もが胸を打たれるはずだ。劇場街はアーサー・ミラー通りと呼ばれているほどの影響があった作品である。アーサー・ミラーの指摘した現代人が抱える問題は今も生きている。
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