「名言との対話」 7月2日。荻昌弘「自然って生きてるってなんて美しいんだ、また命万歳!と叫んでほしい」

荻 昌弘(おぎ まさひろ、1925年8月25日 - 1988年7月2日)は映画評論家、料理研究家、オーディオ評論家。

東大文学部国文学科卒。「キネマ旬報」編集部を経て、1956年からフリーの映画評論家。NHK映画委員、映画旬報編集委員も務めた。TBSの「月曜ロードショー」にレギュラー出演、名解説者としてお茶の間に親しまれた。食通として知られ、食文化、音楽、旅などの評論も行う。

月曜ロードショーの解説者を長年務め、その落ち着いた語り口から、淀川長治、水野晴郎と並んで名解説者として知られた。明晰で無駄のない解説で、品と知性に溢れた格調高いものであった。

テレビカメラを自分の母親だと思えば気が楽ではないかと思うようになり、それ以来テレビ出演への恐怖心がなくなったと語っている。あの説明は母親への説明だったのだ。

当時の映画解説者は、テレビ朝日は淀川長治、日本テレビは水野晴郎、フジテレビは高島忠夫、テレビ東京は木村奈保子、そしてTBSが荻昌弘である。淀川長治の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」という名台詞、水野春郎の「いやぁ、映画って本当にいいもんですね~」なども有名だったが、荻昌弘は決まり文句を使うやり方はとらなかった。立て板に水の語り口。中身のストーリーをばらすことはしない。ほんとに映画がすきなんだなあと感じさせる解説だ。

久しぶりにユーチューブで「月曜ロードショー」のいくつかの語りを聴いた。「ねらわれた学園」「フレンチコネクション」「ローーキー2」「マッカーサー」、そして「桃太郎 海の神兵」をめぐる手塚治虫らとの座談会、、。

著書に『映画批評真剣勝負 ぼくが映画に夢中になった日々《作品鑑賞篇》』『荻昌弘のシネマ・レストラン』『荻昌弘のシネマ・ライブリー』『映画百年史』などの映画にかかわる作品以外にも、「ステレオ」「実践的宿泊論」「男のだいどこ」「味で勝負」「歴史はグルメ」などがある。

冒頭に掲げた「自然と命」発言は、最後の解説となった「ビューティフルピープル/愉快な仲間」という映画で使った言葉である。すでに病魔におかされていた荻昌弘の、命の賛歌の叫びであった。享年62。戒名は「光映院明徳日弘居士」。

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