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「名言との対話」5月1日。戸川幸夫「人に、「見られている」ことを常に意識することです。そういう動物的な緊張を忘れなければ、人間はボケないし、輝きを失わないものなんです」

戸川 幸夫(とがわ ゆきお、1912年4月15日 - 2004年5月1日)は、日本小説家児童文学作家。享年92。

旧制山形高校に進むが、中退する。東京日日新聞(いまの毎日新聞)社会部記者となり、サン写真新聞取材部長、東京日日新聞社会部長、毎日新聞社会部副部長、毎日グラフ編集次長となる。この間、長谷川伸に師事して文学を学び、42歳で「高安犬物語」にて直木賞を受賞。43歳で作家生活に入り、動物に関する深い観察と広範な知識を元にして「動物文学」というジャンルを確立し、国民の支持を得た。

1977年の戸川幸夫動物文学全集』で「日本文学に動物文学という新しいジャンルを開き、独自の高峰をうちたてた」として芸術選奨文部大臣賞受賞。1980年紫綬褒章受章。1985年、児童文化功労者1986年勲三等瑞宝章を受章。

年譜を繰ってみると、晩年に到るまでの間断のない膨大な仕事に圧倒される。53歳、西表島を二度訪問し新種を発見し、イリオモテヤマネコ命名される。

54歳の時の新聞・雑誌等への寄稿などを並べてみよう。「野生への旅V」、「ゴリラ記」、「乃木と東郷」、「謀議」、「三里番屋」、「象」、日本テレビすばらしい世界旅行」の原作執筆のため東アフリカ取材旅行、「からすの王様」、「世界名犬物語」、写真展「動物のアフリカ」開催。、、、、。

著書は200冊に迫る量があり、「戸川幸夫動物文学全集」も冬樹社の全10巻、主婦と生活社の全6巻、講談社の全15館の3つのシリーズがあり、動物文学のニーズが高いことがわかる。

日本犬復活運動を展開した斎藤弘吉日本動物愛護協会初代理事長は、渋谷の秋田犬ハチ公に惚れ込み資料を収集し、朝日の記者が「主人の帰りを待つ老犬ものがたり」として報道した。一番びっくりしたのが渋谷駅の駅長以下駅員だった。このハチ公と戸川は交流があったと戸川の自伝的小説『猛犬 忠犬 ただの犬』にある。この本を読みながら、中野孝次『ハラスのいた日々』という愛犬との日々を書いた傑作を思い出した。犬にも感情、意志、知識、思いやり、情など精神作用としての「心」は確かにある。私も少年時代、そして最近までチョコラという名の犬を飼っていたから、動物文学というカテゴリーがあることに納得する。誰もなし得なかった新世界を切り拓いたのが戸川幸夫だった。

「見る、見られる」ことに敏感であること。、ことに、人に、「見られている」ことを常に意識することです。そういう動物的な緊張を忘れなければ、人間はボケないし、輝きを失わないものなんです」と戸川幸夫は言う。その通りだったか、気になるところだ。


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