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「名言との対話」9月22日。藤原咲平「草にねて 青空みれば 天と地と 我との他に 何物もなし」

藤原 咲平(ふじわら さくへい、1884年10月29日 - 1950年9月22日)は、日本の気象学者

東京帝国大学物理学科卒業後、中央気象台に入る。1920年、「大気中における音波の異常伝播」を発表、学士院賞を受賞。同年ノルウェーに留学、V.ビエルクネス教授に師事、極前線論を学び、さらに英国のN.ショウの下で渦巻きの研究に従事。帰国後、中央気象台測候技術官養成所(現・気象大学校)経て、東京帝大教授。1941~47年同気象台台長として戦時下の気象事業を統括した。この間、風船爆弾の研究に参画。退任後は世界の気象学先端をなしていたノルウェー学派の天気図解析法を日本に導入するなど「お天気博士」として一般にも親しまれた。著書に『』『雲を掴む話『渦巻の実験』『日本気象学史』『群渦―気象四十年』などがある。

「天気予報は七分の学理に三分の直観」という藤原の言葉が残っているが、その後の天気予報の進化はすさまじい。1986年に創業した石橋博良の株式会社ウェザーニューズは、下記のデータをもとに気象に関するニュースを流している。ーーー世界各国の気象庁発表のデータ。世界中の空港気象データ。高層観測データ。アメリカ海軍の収集した気象データ。ヨーロッパ中期予報センターの数値予報データ。宇宙からのデータ。日本の気象衛星ひまわりからのデータ。気象庁のデータ。1300か所に設置されたアメダスからのデータ。全国20サイトの気象レーダからのデータ。ウェザーニュー社独自の観測データ、気象庁も持たない雷データ。風向・風速、気温、海水温、気圧、降水量、雲量、雲形、河川水位、海氷、波、台風、ハリケーン、、、。

30分前のガイアの体温と脈拍を感じる仕事である。気象とは「全体」と「部分」の精妙な関連であるから、東京という部分と地球という全体で予報が可能になる。天気を稼業とする人間はボーダーレスの仕事をしているのだ。この気象情報を相手にするビジネスは、まさにビッグデータ時代の寵児であると思う。

2008年9月24日に諏訪市図書館の2階にある新田次郎コーナーを訪問し、ブログに記録を書いている。「偶然にも、同じ部屋に藤原咲平コーナーがあり、こちらも見物する。藤原咲平(1884−1950年)は、新田次郎と同じ角間新田で、28年前に生まれている。同じ藤原姓であるから、何かしら縁があるのだろう」。以上の文章を書いた2008年当時は、藤原咲平新田次郎の叔父だったこと、その叔父の世話で気象庁に入ったことも知らなかったのだ。

日本で初めてグライダーを飛ばした人物でもあった藤原咲平は、「草にねて 青空みれば 天と地と 我との他に 何物もなし」というすがすがしい歌を詠んでいる。近代の文化人は、必ずその時々の心境や感慨を歌に詠んでいる。長い歴史を持つこの歌の伝統は日本独特の優れた文化であると感じる。この歌を、藤原咲平のお天気人生の心境をあらわす代表作としよう。

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