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エアBCリーグ開幕戦がすごく面白かったという話

●エア開幕戦 of エア開幕戦

野球ファンには「明けましておめでとう」な日がいくつもあって、4月11日はその何度目かの正月だった。本来ならルートインBCリーグの開幕の日だったのだ。
朝から「#エアBCリーグ開幕戦」というタグとともに、ファンがエア開幕戦に向かったり、球団がエア準備をしているツイートが流れていた。
アナウンスの声を収録していたり、マスコットが試合感を出してくれたりして、ああ凝ってるなぁ、手をかけてくれてるなぁ、ほんとに開幕したかったなぁ…などと思っていたら。

すごいのが出てきた。
先ごろBCリーグ12球団の公式Twitterアカウントをフォローしたものだから、各公式のツイートがみな流れてくる。球団によってツイートの温度差はある。練習すら出来ないチームと、少なくとも練習したり紅白戦が出来たりするチームとでは、ツイートも違ってくる。
しかしこれはちょっと唸った。
オセアン滋賀ブラックスVS福井ワイルドラプターズ。

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普通に(普通?)エア開幕戦を想定するのかと思いきや、Twitter上でまともに「対戦」するという。ガチンコ動画対決。しかもファンがTwitterの投票機能を使って投票する。ファンもツイートをリアルタイムで観戦して、試合に参加できるのだ。1イニングごとに違うテーマで両チームが選手による動画を投稿し、見た人が面白いと思った方のチームの投票ボタンを押す。合計の得票数が多い方がその回の「得点」を挙げることが出来る。9回まで対決し、得点の多い方が勝利だ。

いやこれマジで面白い。ワクワクした。企画したのがどちらか分からないが、双方しっかり打ち合わせて準備してきている。
2チーム以外のファンでも、誰でも参加できるところもいい。

●とりあえず滋賀のスタッフさん何者!?

滋賀のホームゲームだから、滋賀球団スタッフもあれこれ演出をしてくれている。選手がリーグ憲章読み上げ、ミキトプロジェクトについてのお知らせ(球場にAEDをというプロジェクトで、球場では毎回流れる)を案内する。監督が告げるプレイボールの声。そして国歌独唱(普通にびっくりする歌の上手さ。ノリとともにタダモノではない…)


そして各チームの動画。


ほとんどの選手を知らないから、予備知識なしの状態で臨む。
PR、トレーニング紹介、お絵描き、反復横跳び勝負、料理、道具紹介、歌。くすっと笑ってしまうもの。すごいな!と思うもの。5回が終わるとグラウンド整備、ラッキーセブンのそれぞれのチームの応援、マスコットのダンス…


長く現地観戦から遠ざかっていると、そうした球場の当たり前のことすら感覚が遠くて、懐かしく思い出すようにして見ていた。

試合は接戦となった。間にこの回の勝利は2点とか3点とか特別ルールの得点チャンスがあることもあったが、それでもいい勝負が続く。
「野球」そのものではないけれど、選手の個性が出て、それぞれに魅力がある。自分はBCリーグをじっくり見始めて3年目の初心者で、滋賀の試合は2018年に一度見たくらいだし、福井の試合は見たことがない。選手もろくに知らない。でも、楽しいのだ。見ていて面白いし、どちらが勝つのか全く読めない。選手の顔と名前と持ち味を覚えられて効果的だとも思う。
こうして動画で見ていた選手やマスコットを実際に試合で見たら、今までとは全く見方が変わってくるだろう。現地での楽しみも増えた。

試合は9-4で滋賀の勝利!
富山から藤原強史選手が移籍しているし、心情的にはどちらかといえば福井応援なのだが、投票はニュートラルに面白いと思った方に入れた。
結果はちょっと悔しい。でも楽しかった。リアルタイムで刻々と変わっていく展開に、自分も投票しながらわくわくしていた。

●エア対決に見るBCリーグの可能性

先の見えないコロナ禍で、BCリーグの先行きもまるで分からない。
試合が出来なければ、球団の危機に、もしかしたらリーグ全体の危機にまで結びついてしまうかもしれない。
その中で、こういう形でファンが実際に選手を見られて対決を楽しめるコンテンツを作ってくれたことは素直にありがたいし、アイディアが爽快だった。そして遠くのファンでも、他球団のファンでも楽しめるコンテンツを作れるということは、これからの可能性を大きく広げられると思う。
他球団もいいところはどんどん真似をしていって欲しい。

遠くのファン、他球団のファン。球場に足を運んでもらうと同時に、そうしたファンが参加したり、お金を出して何かを出来るようなコンテンツが出来ると、球団にもメリットは大きいのではないだろうか。私もNPBだ富山だ武蔵だ神奈川だという兼任ファンだけれども、兼任ファンを取り込むことはかなり重要なのではないかと思う。兼任ファンは漏れなく野球好きだ。地元の人々を巻き込んでいくのと同時に、一地方に限らず野球好きな潜在力を掘り起こして、集客や宣伝に活用していければいい。

●ガチなスタッフとガチなファン

BCリーグファンは本当に球団が好きで、球団とリーグの未来を真剣に考えている人が多いなと感じる。みなあまりにも真剣に現状を憂え、未来を考え、どうしたら良くなるかと企画したり論じたりしていて、現状何も考えずに楽しむということが出来ないんじゃないか、とすら思う。自分もそういうところはある。本当はBCリーグはこういうのが理想、というのがあるのだけど、そこは遥か遠いので、そこに少しでも近づいていけるように考えてしまう。与えられるものだけで、幸せというわけにはいかないのだ。何もかもが足りなくて、足りないけれども豊かで熱い、BCリーグ。

自分はほんの何年か見ているだけだけれども、かなりのところBC沼にはまってもいて、今後も深く関わっていくことになるのだと思う。
見てきた人たちも、見ていきたい人たちもいて、行きたい場所もある。関わりたいこともある。書くこともしていきたいし、他に出来ることがあるならやってみたいと思ってもいる。
BCリーグって、ファンが関わっていける部分が大きいのだ。ファンも選手や球団スタッフも、他球団も、リーグの中枢にすら近い。そして、提案したり企画したり実行したりすることのハードルが低い。やろうと思ったらやれる。その実行の一つの結果がこの「エア開幕戦」なのだろう。

今は「ピンチ」だけれども、「ピンチはチャンス」でもあると捉え、前向きに様々に考え実行していく人たちがいる。ギラつく熱い思いが、本当に直接的に見える。
そういうBCリーグは、やはり可能性の塊なのだと思う。

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