その日の君に、手渡す言葉を考えている
声は、届く。
届かない声にも意味はある。気持ちだけだって大きな力になる。
けれど、ささやかな声を届けに行くのが、自分にとっても大切なことになっている。
富山GRNサンダーバーズはBCリーグの西地区だ。
西地区は福井、石川、滋賀、信濃、富山とあって、どこが近いかといったら信濃が一番近い。富山に車で行くのはきついから、高速バスか新幹線になる。長野ぐらいならICから近ければ片道3時間だ。充分日帰り可能。
後援会に入っているのだから、ホームゲームはチケットがついてくる。
ほんとはホームにたくさん行きたい。でも、ビジターはビジターでいいこともある。色んな球場があるし。入場してからビジター練習が見られるし。
(ちなみにユニは同じだ)
4月20日。そんなわけで、悩んだ末に長野に行った。
片道3時間、のはずが、朝から事故渋滞で少し手間取った。マクレ!とばかりに車を飛ばす。
(いやうちの車は飛ばしたら瞬時にガソリンなくなるので大して速度は出さない)
去年行った信濃の試合は長野オリンピックスタジアムだった。
初めて行った中野市営球場。雪をかぶった山が見えて桜が綺麗。
もっと早ければ選手たちと試合前に顔を合わせることも出来たんだろうけど。差し入れを係員に言づけて、富山の広報さんに渡してもらう。
飲み物を買いに出ていた菅谷潤哉投手に会った。声をかけ激励する。
前の方の席にいたら、河本光平キャプテンも挨拶してくれた。乾真大兼任投手コーチも、先発なのにこちらに気付いて笑顔で挨拶してくれた。
座った頃にはもう相手のシートノックあたりだったので、見ながらおにぎりを食べていると、吉田凌太投手がスタンドにやってきて、ちょこんと隣に座って話をしてくれた。選手と距離の近いBCLではあるが、彼はその中でも特別(笑)(まだ会ったの2回目)
身長165cm。カツオさんを目標に掲げる左腕。作年先発で使われて、今年も二桁勝利を口にしていたものの、リリーフ登板の機会が増えている。
前日には先発ウーターが1回1/3で降板。全体で被安打2で7失点という大変な試合をしていた。中継ぎも相当投げる羽目になった。吉田くんは3日前に先発で4回投げている。
今日は乾さんが先発だから、きっと長いイニング投げてくれるはず。
「今日は投げないで済むといいんですけど。投げてもワンポイントくらいで…」
そんな願いを踏み散らかして(さだまさし風)、試合は風雲急を告げることになる。
初回に5点を先制し、乾さんが5回裏にやや崩れたものの、何とか4失点に留め、1点を加えて6-4とした。
6回を投げ切った乾さんは、そこから投手コーチの役割で継投に奔走する。
7回は有馬投手。変則気味のオーバーハンドで、タイミングが取りづらいのかしっかりと1回抑える。
8回は、中日育成から戦力外になった山本雅士投手。
こちらは大乱調。話によればいい時と悪い時があるのだそうだが、無茶苦茶悪い時だったのだろう。トライアウトの時には三者連続空三振だったはずだから、調整が上手く行ったら大きな戦力になるのじゃないかな…。
とにかくストライクが入らず、一死満塁になったところでタイムリー。
ベンチはたまらずクローザーの菅谷くんにスイッチ。
この時点では6-5でまだ勝っている。引き続き一死満塁。回跨ぎか…と思うが、それでもクローザーが登板したのだから、何とかなるだろうと。
だがここからが長かった。
菅谷くんもストライクが入らない。連続押し出し。タイムリー。
この回一挙8点を取られる悪夢となった。
もう何か、これだけ取られると自分の痛みは感じなくなる。試合は仕方ない。それより彼のメンタルが心配だ。終わった後に何て声をかけようかとそれだけを考える。
乾さんはブルペンへ行ったり来たりしていた。
想定外の大量失点。それもまだ、一死のみでアウトが取れない。
急遽マウンドに上がったのは吉田くんだった。
「今日はもう投げないと思ってましたから。靴履き替えちゃってチーズケーキ(好物)食べてましたよ」
でも乾さんが慌ててブルペンに来て、「投げてくれ」と言ったそうで。
急遽肩を作って。それでも。
満塁にも動じない、そのメンタルたるや。
気負わずストライクを投げ込むピッチング。この安心感といったらない。
さすが「ストライクはいつでも取れる」と言っただけはある。
途中ゴロの間の失点とタイムリー1本打たれたものの、レフトの好返球もあり、あんなに遠く思えたアウト2個を取ってくれた(失点2も自責は0)
数時間前に隣で人懐こく笑ってた小さな投手の投げる姿は頼もしくて、その日一番のかっこよさだった(乾さんごめんなさい)
試合後、選手が出てくるのを待って、声をかける。
終わってみれば6-12の大敗だし、声のかけ方にも迷うけれども。
でも、遠くから来て試合を見られて楽しかった。顔を見られて嬉しかった。
去年から見に来て、動向を追ってきたチームと選手たちは、智さんがいなくなっても、離れてても大切な仲間としてずっと応援している。
時々しか会えないけれど、会えた時には声を届けたい。
ヤクルトでも同じなのだけど、どんなに大敗しようと、責める言葉なんて一つも出てこない。
いつもいつも、励ます言葉ばかりを考えている。
96敗シーズンの頃も。
何でかな。そう考えて。
もう家族に対するような気持ちと同じなんだと思った。
家族が失敗して落ち込んでたり、試合に負けて凹んでたりしたら、しっかり!ってどやしつけたりはしても、決して罵ったりしない(する家族もいるというのは置いといて。自分の場合)。
励まして一緒に頑張ろうって思う。
それくらい、身近に思ってるし大事なのだ。元気が出るように。少しでも力になれるように。
試合を見に行って負けたら、また見に行こうと思う。
失敗してたら、上手くいかなかったら、もっと応援しようと思う。
見られることが幸せだよ、会えて嬉しいよ。また来るよ。
今のチームで野球を出来るのは、今だけだから。1回でも多く見るために。
BCLはNPBよりも厳しくて、選手は毎年たくさん入れ替わる。
監督コーチも入れ替わる。
毎年毎年、だからチーム作りが大変なんだと思う。
去年も最初は噛み合わなかった。段々噛み合っていいチームになっていった。
でも最後にCSでボロ負けして終わったりしたし、そうそう全部上手くいくものじゃない。
去年こうだったから、今年これが加わってさらに強くなるとか、そんな単純な足し算じゃない。
でも、きっと今からもっと強くなる。
一人ひとりが強くなって、もっと強いチームになる。それを信じてる。
河本キャプテンや菅谷くんとも少し話をした。
吉田くんは差し入れのチーズケーキの余りをかき集めて嬉しそうに食べていた。その顔見たら、またいくらでもチーズケーキ買ってこようと思ってしまう。
菅谷くんのかっこいいところも、その日ノーヒットだった河本くんや葵くんのヒットも、また見に行くね。
今度はホームで。
2日後。6-12の次の試合。
15-0で富山が勝ってたから笑ってしまった。
先発は今年入ったフローレス。いい投手なんだな。8回投げてくれた。ありがとう。
菅谷くん、大量リードあった中、ランナーは出したけど1回投げて無失点。良かった。
河本くんも葵くんもマルチ。よしよし。
また声を贈ろう。
どんな言葉を贈ろうか。どんな風に受け取ってくれるだろうか。
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