Gを巡る堕落

人間は生まれ落ちた瞬間が最高。それこそ肌が赤くて毛が薄い、外気にさらされて数秒の時期が人間としての絶頂なのだ。後は身体が無駄にでっかくなって、蛇足な知識やら肉体やら本来不必要な体力なんかをぶくぶく蓄えて堕落していくのだ。成長とか進化とかは体の良い堕落だ。

そんなこと考えていた時期があった。実際のところそいつは小説を書くためにでっち上げた思想で、実際はきっとそんなことないのだ。だって赤子のまま美しいまま生きたら、生涯美味いものは食えないし、身体をいじくり回して遊べない。衣食住は言い換えれば堕落だがやっぱり楽しいのでやめられない。

私の部屋に堕落が溢れている。冷蔵庫の中には堕落、本棚には堕落。ていうか本棚が堕落。脱ぎ散らかした服もそいつを釣り上げる洗濯バサミも、今半分寝転がってるベッドも全部、堕落! つまらない考えをつまらないと認めて面白おかしくしてしまえば小説になる。

Writer of Wide Scence