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軽快に歌いピアノを弾く 〜 ナット・キング・コール『アフター・ミッドナイト』

(3 min read)

Nat King Cole / After Midnight

(オリジナル・アルバムは12曲目まで)

ナット・キング・コール1957年のジャズ・アルバム『アフター・ミッドナイト』のことは以前も一度書きましたが、やっぱりこれぼく好きなんだぁ〜。最近ひさびさに聴きなおす機会があって、ふたたびはまって再ヘヴィロテ。

1曲目「ジャスト・ユー、ジャスト・ミー」からすでにからだに快感がほとばしり、スウィンギーな、いやドライヴィングといってもいい自然なビートに身を任せ、そのままおのずと指や腕、腰やヒザがあわせて動きます。これですよ、これ、これこそナットのジャズの魅力。

つまり『アフター・ミッドナイト』の1957年というと、ナットはもはやピアノの前から立ち上がり、スタンド・マイクで歌うポップ・シンガーとして大成功していた時期。それも好きなんですが、こういったキャリア初期、1940年代初期っぽいトリオ(+α)でやるジャイヴィなジャズこそ大好物。

といっても40年代トリオものと比べて本作にジャイヴ味はちっともありませんけどね。それでもリビング・ルームでゆっくりくつろいでいるようなアット・ホームでファミリアー&インティミットな選曲&サウンド構成&スウィング感は、スケールの大きなビッグ・バンドを背後に歌う姿からは想像できないすばらしさです。

ヴォーカルはもちろん練れていていいし、そしてそれ以上にポップ・スター、ナット・キング・コールのコンボ・ジャズ回帰路線という目論見でプロデュースされたものだけに、もとから達者なピアニストとしての腕前を存分に発揮してくれているのもうれしいところ。歌うところしか知らないファンだったら「この上手なピアノはだれ?」って思うかも。

むかしから大好きな一作なうえ、ここ数年のぼくの音楽的嗜好の変化でもって、いっそうこりゃ〜いい!と感じるようになった、それをこないだ発見したというのが真相で、つまりこじんまりしたサロン・ミュージックふうの落ち着き、くつろぎ、おだやかさがアルバムを支配しているのがいいんですよね。

考えてみれば『アフター・ミッドナイト』というアルバム題だって、そんなリラックス・ムードなセッション風景を言い表しているものですし、ナット以下腕利きのスウィング系ジャズ・ミュージシャンたちによる熟練の演奏に支えられ、アフター・アワーズ的に軽くす〜っと歌いピアノを弾く余裕には憎たらしいほどの魅力があふれています。

(written 2022.6.18)

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