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ジョージ・ウォリントンをちょこっと

(3 min read)

George Wallington / Jazz For The Carriage Trade

30年以上ぶりくらいに聴いたジョージ・ウォリントンのプレスティジ盤アルバム『ジャズ・フォー・ザ・キャリジ・トレード』(1956)。ジャケットが好き、中身も好きで、そのむかし愛聴盤だったのは、この音楽のなんとなくオシャレな雰囲気と、それからぼくはフィル・ウッズのアルト・サックスのファンなんで、だからそれも気に入っていたと思うんですね。アート・テイラーの軽いビート感も好きでした。

このアルバムだと、たとえば1曲目(タッド・ダムロン)、2曲目(ジョージ・ガーシュウィン)と流れもいいですよね。音楽的にはビ・バップ寄りかなと思いますが、ちょっぴりハード・バップの香りもします。1956年ですからちょうどハード・バップが完成に向かっていた時期で、ウォリントン自身はどっちかというとビ・バッパーでしょうけど、このクインテットはもうちょっとモダンです。

1曲目のタッド・ダムロン「アワ・ディライト」が本当に調子よくて、この演奏のこのスウィング感が大好きなんですけど、むかしいちばん聴いていたのはこのなんとなくのムード、雰囲気だったんですね。これがモダン・ジャズだっていうような、しかもむずかしくもない、聴きやすくオシャレな感じもするっていう、そんなふうにただよう空気感を楽しんでいました。懐かしいなあ。いま聴いてもそんな心持ちが鮮明によみがえってきます。

それで「アワ・ディライト」でもそうなんですが、フィル・ウッズのアルト・サックスのこの音色、なんといったらいいのか、ちょっとジーン・クイルなんかにも通じるこの湿った塩辛いサウンドがぼくはたまらなく好きで、1956年だとウッズはちょうどライジング・スターといったところだったでしょうけど、チャーリー・パーカー直系にしてパーカーとは異なるムードをぼくはむかしから感じとっていたんですね。パーカーのサウンドは透徹していて乾いていますが、ウッズのそれには適切な湿り気があります。

2曲目のジョージ・ガーシュウィン「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」でもそんなウッズのアルトが活躍、雰囲気をもりあげてくれます。個人的にはこのガーシュウィン・ナンバーそのものが好きで、だれがやったどんなヴァージョンでも気に入ってしまうくらいなんですけど、それはたぶんこのメロディの動きが好きだからいうことなんでしょうね。都会的なムードをそこに感じます。ここではウッズとドナルド・バード二管をからませるアレンジもオシャレでいいですね。

アルバムにはもう一曲スタンダードがあります。そのバラード「ワッツ・ニュー」では、基本ウォリントンのピアノを楽しむものでしょう。その後ウッズとバードも出ますが、大半はピアノ・トリオ演奏です。個人的にはイマイチでしょうか。このアルバムでは管楽器が聴こえる時間の方が好きですから。だから、ウッズの書いたオリジナルである4曲目「トゥゲザー・ウィ・ウェイル」なんかはかなり聴けますね。曲題からして管楽器二本をフィーチャーしているんだなとわかるでしょう。やはりウッズのアルトが快調です。

(written 2020.4.9)

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