見出し画像

サンタナのラテンの血を担ったホセ・”チェピート”・アレアスのソロ・アルバム

(4 min read)

Jose “Chepito” Areas / Jose “Chepito” Areas

カルロス・サンタナ率いるサンタナは西海岸ラテン・ロックの雄。そのパーカッショニストとして1969年から74年まで大活躍した、ニカラグア出身、チェピートことホセ・アレアスの唯一のソロ・アルバム『ホセ・”チェピート”・アレアス』(1974)が2020年に話題になったのは、長らくレコードが廃盤状態だったところに、突如CDリイシューされたからですね。世界初CD化だそうです。

レコードは買わなかったファンも多かったらしく、廃盤になってその後まったく入手不可になってしまっていたみたいなので、CDリイシュー、しかも日本で、というのは歓迎されましたよね。ぼくのTwitterタイムラインでもそこそこ話題になっていました。Spotifyなどサブスクに入ったのもリイシューされたからだったのか、もっと前から聴けたのか。

チェピート人脈のラテン・ミュージシャン群が大挙結集してサポート。くわえて、初期サンタナ仲間のニール・ショーンやダグ・ローチ、リチャード・カーモード、トム・コースター、さらにはスライ&ザ・ファミリー・ストーンのグレッグ・エリコ、マロのハドリー・カリマンらも曲によって参加しているんですよね。

それでこんなにぎやかなラテン・ロック、ラテン・ファンクをくりひろげているわけですが、サンタナ三作目までのファンのみなさんであれば文句なしに楽しめる内容になっているなと思いますよ。初期サンタナでいかにチェピートがリズムの核だったのかもよくわかる内容で、実質的にサンタナとそう大きくは違わない音楽。こういうのがぼくなんかもほんとうに大好きなんです。

2曲目「ファンキー・フォルサム」とか3曲目「リメンバー・ミー」(これらで聴けるカルロス・サンタナばりのラテン・ロック・ギターはニール・ショーンでしょう、そうなると『サンタナIII』なんかでも実はけっこうニールが弾いていた?)なんかもたまりませんし、5曲目「モーニング・スター」とか、あるいは7「セーロ・ネグロ」もいいですね。

個人的クライマックスは8曲目「テレモト」の後半部。前半はトロンボーンを軸にクールな演奏なんですけど、中盤で3・2クラーベのリズムが入ってきたら突如、ほんとうに「地震」のような激しいラテン・グルーヴに移行。煮えたぎる血をこれでもかとぶちまけるような演奏に、そのまま聴き手はケイレンし瀕死状態におちいってしまいます。ラスト9曲目「グァグァンコー・イン・ジャパン」もすごい。日本へはサンタナで来たんでしょうね。

サンタナでは、自身のやりたいラテン・ミュージック的なことを思い切り存分にやり切れていたわけじゃなかったんだなということもちょっとは理解できる爆発ぶりで、キューバン・リズムを核とした灼熱のラテン・グルーヴ炸裂チューンのオンパレードで、血がたぎります。

このアルバムがレコード・リリースされた1974年というと、ラテン界はサルサ(ニュー・ヨーク・ラテン)の大ブーム真っ只中だったわけですが、東海岸のそれに対し、西海岸ではこんなラテン・ミュージックが展開されていたっていうこともよくわかる、格好の名作ですね。

(written 2020.11.19)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?