見出し画像

ラテン・ジャズ・ファンクな「ギミ・シェルター」〜 カル・ジェイダー

(3 min read)

Cal Tjader / Agua Dulce

おなじみラテン・ジャズ・ヴァイブラフォン奏者、カル・ジェイダー(Cal Tjader)が、大好きな曲であるローリング・ストーンズの「ギミ・シェルター」をやっているのがあるぞと聞きつけて、Spotify検索し、アルバム『Agua Dulce』(1971)にたどりつきました。

問題のストーンズのカヴァー「ギミ・シェルター」はアルバム4曲目に収録。アナログ盤ではここまでがA面だったらしいです。肝心の内容は?というと、ストーンズ ・ヴァージョン(『レット・イット・ブリード』1969)を大きく換骨奪胎したラテン・ジャズ・ファンクにしあがっていて、こりゃいいですね。好みです。

しかもテンポをグッと上げ、パーカッシヴな感じにして、ある種の軽み、疾走感まで表現しています。この種の軽みはもともとラテン・ミュージックに備わっているものですが、ストーンズのオリジナルとはなにもかもが違うこのカル・ジェイダーの「ギミ・シェルター」、ここまでやれば、もはや曲は題材でしかないわけで、素材の味を活かした料理でもなく、まったく姿かたちを変えてしまっていると言えますね。

このラテン・ジャズ・ファンクな「ギミ・シェルター」、アルバム『Agua Dulce』のなかではさほど重要な位置を占めているというわけでもなく、ほんのちょっとした軽い息抜き、お遊び程度なだけですね。ラテンといってもロック・ナンバーに近いノリはかすかに残っていますしね。

アルバム全体では、むしろサルサ・ジャズみたいな方向に近寄っているんじゃないかというのがぼくの感想で、オープナーの1曲目「Agua Dulce」からしてそうですし、また「ギミ・シェルター」が終わってB面にくれば、冒頭二曲がどっちも完璧なサルサですよね。気持ちいい。

B面には、しかも二曲のメロウ・ラテン・バラードがあるのも聴きどころです。(アルバム全体の)7曲目「インヴィテイション」とラストの「モーニング」。甘美のきわみ。こういったちょっぴりボレーロっぽいラテン・バラードを味わってメロウな雰囲気にひたり妄想に耽るのは、いつだって好きですね。

(written 2020.10.14)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?