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秋の陽だまりのように快適 〜 原田知世『恋愛小説 4』

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原田知世 / 恋愛小説 4〜音楽飛行

リリースされたばかりの原田知世最新作『恋愛小説 4〜音楽飛行』がかなりいい。伊藤ゴローがプロデュースするこのカヴァー・ソング・シリーズのなかでは最高の出来になったんじゃないかという気すらします。ほとんど傑作といっていいです。

今回はすべて洋楽ソングのカヴァーで、1960〜70年代初演のものばかり。ビートルズ、モンキーズ、カーペンターズ、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ロネッツ、スティーヴィ・ワンダー、ビリー・ジョエル。一定世代にはこたえられない選曲でしょう。

ゴローは基本的にオリジナルのアレンジを尊重し、でありつつフレイジングはそのままに楽器を置き換えたり、ジョニの「Both Sides Now」で聴かれるマリンバのかすかなサウンドなど細かく手のこんだ隠し味までていねいにほどこしているのがわかります。

そしておどろくのは知世ヴォーカルの成熟ですね。以前からくりかえしていますように50歳を超えたあたりから歌手としての円熟とめざましい成長・完成をみせるようになり、キュートでチャーミングな持ち味はそのままに歌手として安定するようになりました。

今作でも全曲英語詞ということで歌いにくさがあったのでは?とリリース前はぼんやり想像していましたが、いざ聴いてみたらとんでもない、非の打ちどころのない歌いこなしで、これなら日本語歌手による洋楽カヴァー集として文句なしに推薦できる内容です。

ちょうどいまぐらいの秋の心地いい晴れた日の午後の陽だまりを思わせる本作での知世の歌(をゴロー・サウンドが支えているわけですが)を聴いていると、ほんとうに心地よくて夢見心地。このままこの時間が永遠に続けばいいのにと感じるほど。

ほんとうに歌手として知世は成長した、円熟してきているというのを心の底から実感できるアルバムです。永年の愛聴作になりそう。

(written 2023.10.28)

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