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なんてかわいい古典ショーロ 〜 オス・マトゥトス

(4 min read)

Os Matutos / De Volta Pra Casa

bunboni さんに教えてもらいました。

1曲目、ホーンズがからみはじめ、しばらくして弦楽器も入ってきた瞬間にとってもいい気分。それはまさしくかわいい古典ショーロの趣だからですけど、こんなショーロ・アルバムって、あるようでいまやなかなかないと思うんですよね。オス・マトゥトス(Os Matutos)の2019年作『De Volta Pra Casa』のことなんですが、もうすっかり大の好物になって愛聴しています。

このアルバムでは出だしいきなりやわらかくふくらんだ低音管楽器が聴こえますが、それがほかならぬオフィクレイドなんですね。吹くひともいなくなったこの古典的管楽器を現代に再興したのはエヴェルソン・モラエス。オス・マトゥトスのメンバーですが、エヴェルソンとオフィクレイドといえば2016年の大傑作だったイリニウ・ジ・アルメイダ集が思い出されます。あのときいっしょだったトランペットのアキレス・モラエスもオス・マトゥトスのメンバーなんですね。

このイリニウ曲集をやっていた管楽器編成に+トリオ・ジューリオのメンバーも参加しているということで、由緒正しき庶民派エンタメ古典ショーロをやるにはいまのブラジルでもこれ以上のメンツはないといったひとたちで結成されたバンドみたいなんです。うれしいかぎりですね。しかも今回ぜんぶメンバーの書き下ろし新曲とのこと。

アルバムを聴くかぎり、イリニウ曲集などで味わう100年前の古典ショーロ楽曲との差はなにもなく、まるでモラエス兄弟らみんなはこっそりと知られざる楽譜を発掘してきたのではないか?と思えるほどオールド・ファッションド。いや、オールド・ファッションドというもおろか、こういったショーロの古典的な曲は不変の美を持っていますから、いつの時代でも、現代でも、同じように輝けるエンターテイメントということなんでしょう。

とにかく聴けばその可愛らしいキュートなメロディに魅了されること間違いなしの曲が並んでいて、アレンジや演奏は微細な部分まで綿密な注意が払われていますけど、聴いた感じナチュラル&スムースに響くというのが彼らの熟達のあかしでしょうね。小難しいことをなにも考えず、ただただその娯楽にひたっていればいい音楽で、なんてかわいいんだと聴き惚れているうちにアルバムは終わってしまいます。

(written 2020.4.30)


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