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マライア・キャリーの初来日ライヴ・コンサート

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Mariah Carey / The Rarities

昨年発売されたマライア・キャリーの変則ベスト・アルバム『ザ・レアリティーズ』(2020)。(フィジカルだと一枚目にあたる)前半には個人的にあまり興味がなく。聴きたかったのは二枚目にあたる後半のライヴ・コンサート分です。

それはマライアの初来日コンサートとなった1996年(3月7日)の東京ドーム公演を収録したもので、そのころちょうどマライア好きだったぼくは、そのライヴ・コンサートに行きはしなかったんですけど、だいぶ経ってからこうやって聴けるようになったのはうれしいかぎり。

マライアはそもそもあまりっていうかほとんどライヴ・アルバムをリリースしない歌手で、たぶん1992年の『MTVアンプラグド』しかなかったですよね。あれ、ぼくは大好きで、マライアのぜんぶの作品のなかでいまでもいちばん好きなんですけど、でもこれはEP扱いだし、例外作品みたいな感じで、あまりディスコグラフィにも入らないっていう。

だからその意味でも『ザ・レアリティーズ』後半の1996年東京ライヴは貴重だなって思うわけです。95年に『デイドリーム』が発売されたのに伴うツアーの一環でした。97年には『バタフライ』が出ていますが、そこまではぼくもCD買いました。ちょうどそんな時期の日本公演だったんですよね。

ライヴの導入部的な「デイドリーム・インタールード」を経て、まずはヒット曲「エモーションズ」で幕開け。たいへんみごとなリズムへのノリと声のノビ、ツヤだなと感心しますよねえ。特徴だった超高音部もまだまだ健在。1990年代のマライアはまさに最強無敵の歌手だったなあと実感させてくれる歌唱ぶりです。

その後、しっとりしたバラード(ゴスペル調もあり)とビートの効いたダンス・ナンバーを織り交ぜながら歌っていくマライア。どっちかというとお得意の歌い上げ系バラードが多いかなと感じます。曲間のおしゃべりでは、練習してきたであろう日本語もちょこっと披露、ポップ・スターだけあるっていうサービス精神をみせてくれますね。

10曲目ではバッドフィンガーの「ウィズアウト・ユー」も。これはマライア自身、もっと前にスタジオ録音して発売していた(『ミュージック・ボックス』1993)カヴァー・ソングですが、そのときと同様にハリー・ニルスン・ヴァージョンに則した内容になっています。曲紹介でもそうしゃべっていますよね。切なく哀しいトーチ・ソングをマライアらしい歌唱力で歌い上げ、これは泣けます。この日のライヴのひとつの勘所かもしれません。

「ウィズアウト・ユー」が終わったら、マライアによるクワイア(合唱隊)の紹介があって、ラストまで一気に六曲を駆け抜けます。11「メイク・イット・ハプン」のテンポの効いたノリもいいし、ロック調の12「ジャスト・ビー・グッド・トゥ・ミー」も聴かせます。デビュー曲だった14「ヴィジョン・オヴ・ラヴ」でみせるダイナミックな表現力なんかは、当時のポップ歌手はだれも近寄れなかったであろうものですよね。

本編ラストの16「エニイタイム・ユー・ニード・ア・フレンド」が終わってすぐにアンコールだったであろうかのクリスマス・ソング「オール・アイ・ワント・フォー・クリスマス・イズ・ユー」がはじまるのには編集が入っているんでしょう。軽快に歌いこなすマライアのヴォーカルに、客席の興奮も最高潮。すごい歓声です。

(written 2021.2.10)

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