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充実のラテン・アメリカン・フュージョン 〜 アレックス・アクーニャ

(3 min read)

Alex Acuña / Gifts

御多分に洩れずウェザー・リポートで知ったペルー出身のドラマー、アレックス・アクーニャ。1980年代なかごろには一度渡辺貞夫さんの全国ツアーに参加して活躍、それも印象的でよく憶えています。

17年ぶりの個人リーダー名義新作『ギフツ』(2022)は、やっぱり基本ウェザー・リポートっぽい “あのころ” のフュージョンが中心。こうした音楽をリアルタイムからずっと聴いてきましたが、当時あんだけボロカス言われたのがいまではすっかりクラシカルに響くっていうのはおもしろいですね。

フュージョンもそれなりに貫禄が出てきたということか、本作でも聴けるアレックスあたりの姿勢、不動のドラミングなど聴いていれば、決して軽視したり無視したりしていい音楽じゃないぞとわかります。すくなくともぼくは当時からのフュージョン・ラヴァーで、いまだその愛好はしぼみません。

新作はドラムス&パーカッションのアレックスのほか、鍵盤(ベネズエラ)、ギター(ペルー)、ベース(プエルト・リコ)、サックス(ペルー)、トランペット(USA)が基本編成。曲によりチェロやバック・ヴォーカリストも参加しています。ラテン・アメリカン・フュージョンとでもいえる布陣でしょう。

聴き進み、3曲目でオッ!となりました。なんとキャノンボール・アダリーのゴスペル・ジャズ・ナンバー「マーシー、マーシー、マーシー」なんですよね(ここでは「マーシー、マーシー」と記載)。やっぱりウェザー・リポート時代の恩返しっていうかコンポーザーである故ジョー・ザヴィヌルへのトリビュート的な意味合いなんでしょうか。

ラモン・スタグナロのファンキー&ブルージーなギター・プレイが目立っているできあがりで、これもいいなあ。エレピが弾く例のアーシーでキャッチーなリフはそのままに、キャノンボール・ヴァージョンに比しぐっと明るいポップさを増した印象で、宗教的敬虔さみたいなのは消えていますが、軽やか&さわやか。

アルバムにはもう一つ有名ジャズ・ナンバーがあって、7曲目「ワン・フィンガー・スナップ」。ハービー・ハンコックのオリジナルからガラリ様変わり、4/4拍子パートも適宜おりまぜながらのポリリズミックなパーカッション陣が活躍するラテン・フュージョンにしあがっているのはビックリ。

また「マーシー、マーシー、マーシー」の次に来る4曲目は、哀切なハーモニカ・サウンドがメロディをつづる美メロ・バラード。それに続く5曲目はストレート・フュージョンのようにはじまりますが、中盤でなぜか突然トレスが炸裂、その後は一転して歌も入るキューバン・サルサに展開するっていう。

その他聴きごたえがじゅうぶんあって、しっかりしたさわやか満足感を残す充実の内容。いままでのアレックスのソロ・アルバムのなかでみてもいちばん納得のいく内容ではないでしょうか。

(written 2022.11.26)

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