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プリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』未発表曲を聴く

(7 min read)

Prince / Sign O The Times (Super Deluxe Edition)

9月25日に発売になったばかりのプリンス『サイン・オ・ザ・タイムズ』スーパー・デラックス・エディション(2020)。CDでいう1&2枚目のオリジナル・アルバムの話はしました。CD3収録の既発曲シングル・エディット&別ヴァージョンとかにはさほどの興味はないので、今回のスーパー・デラックス・エディションではじめて世に出た4〜6枚目の未発表曲のことについて、ちょちょっとメモしておきましょう。

4〜6枚目までの三枚に相当するとなれば、けっこう大量にありますよね。CD4収録分でいえば、マイルズ・デイヴィス狂のぼくとしてはどうしても4曲目のマイルズとの共演「キャン・アイ・プレイ・ウィズ・U?」が気になるところ。これ、こうして公式発売されたものを聴いてみると、いままでブートで聴けたものとはやはり内容が違いますね。

曲のできばえとしては、う〜ん…、と言わざるをえない「キャン・アイ・プレイ・ウィズ・U?」。お蔵入りにしただけのことはあったと、ようやく納得できた次第です。マイルズがトランペットをオーヴァー・ダブして送り返してきたテープにさらに音を重ね、プリンスは苦心してマイルズ色を薄めようとしたのがうかがえます。

シタール(エレキ・シタールじゃなくて本物の生シタールの音に聴こえる)&タブラを使ってエキゾティックに仕上げたCD4-6「ストレインジ・リレイションシップ」なんかはおもしろいですが、曲そのものはオリジナル・アルバムで聴けました。様子がだいぶ違いますけど。

続くCD4-7の「ヴィジョンズ」。これは美しいですね。ヴォーカルなしのインストルメンタルなピアノ独奏で、うん、こりゃきれい。プリンスはときどきこういう演奏をピアノで、スタジオでもライヴででも、やりますよね。聴き惚れます。

さわやか涼やかでジャジーなホーン・リフ(といってもシンセ・ホーンだけど)が終始ヴォーカルにからむ「ザ・バラッド・オヴ・ドロシー・パーカー:ウィズ・ホーンズ」も印象的ですが、続く「ウィットネス・4・ザ・プロセキューション(ヴァージョン 1)」が、これはカッコいい。タイトなファンク・チューンです。

そう、『サイン・オ・ザ・タイムズ』期(前後ふくむ)のプリンスの音楽はファンク・ミュージックに傾いていたと思いますし、そうなっている曲のほうがポップなロック・チューンみたいなのより魅力的に響くなあというのが個人的感慨です。

だから、このファンク寄りっていう視点で、その後の収録曲をひろっていくと、CD4-11「アンド・ザット・セイズ・ワット?」(ジャジーでもある)、12「ラヴ・アンド・セックス」、16「ビッグ・トール・ウォール(ヴァージョン 1)」(ポップス寄り、タブラ&シタール入り)、18「イン・ア・ラージ・ルーム・ウィズ・ノー・ライト」。

CDでいう五枚目分に入り引き続きファンク・チューンをひろうと、CD5-2「イット・エイント・オーヴァー・ティル・ザ・ファット・レイディ・シングズ」(インストルメンタル)、3「エッグプラント」(ヘヴィ)、5「ブランチ」(ギター印象的)、6「ソウル・サイコデリサイド」(かっちょええ〜!JBみたい)。

CD5-9「フォーエヴァー・イン・マイ・ライフ」と10「クルーシャル(別歌詞)」はファンク・チューンじゃないし、既発のものだけど、むかしから大好き。とにかく好きです。聴きやすいポップ・バラードですね。「クルーシャル」のほうは『クリスタル・ボール』収録のものと歌詞が違っているだけでなく、ピアノが伴奏に入るというサウンドも異なります。

ファンク・チューンを引き続き。CD5-11「ザ・ココア・ボーイズ」(タイトでシャープ、これもJB流)、13「ウィットネス・4・ザ・プロセキューション(ヴァージョン 2)」はディスク4にもあったやつの別ヴァージョン。

ファンク・チューンをひろってCDでいう最終六枚目に入ります。CD6-1「イモーショナル・パンプ」(軽め)、2「リバース・オヴ・ザ・フレッシュ」(カミーユ声、カミーユについては別途詳述予定)、5「ワーリー」(ファンク・バラード)、6「アイ・ニード・ア・マン」(他者への提供曲だったらしい、軽め)。

CD6 -8「ジェラス・ガール」(曲題はジョン・レノンのもじり?、これも女性歌手が歌う予定だったっぽい)、9「ゼアズ・サムシング・アイ・ライク・アバウト・ビーイング・ユア・フール」はファンクじゃないけど、プリンスにめずらしいレゲエ・チューン。プリンスのこれだけ鮮明なレゲエって生涯これだけでは?

CD6-10「ビッグ・トール・ウォール(ヴァージョン 2)」は、ヴァージョン1がディスク4にあったもの。12「ワンダフル・デイ」(まさしくプリンスにしかできないプリンス流ファンク)、13でふたたび「ストレインジ・リレイションシップ」の別ミックス。このミックスは打楽器パートが特色ですが、この曲、好きだったんでしょうかねえ。

七枚目以下は1987年ユトレヒト・ライヴなので、稿をあらためます。

(written 2020.9.26)


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