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あのころのジャジー・ポップスのように 〜 エマ・スミス

(3 min read)

Emma Smith / Meshuga Baby

萩原健太さんに教えていただきました。

ジャケットにわざわざ「STEREO」の文字が配されているあたり、露骨にあの時代を意識したいかにもなレトロ感ただようエマ・スミスの最新アルバム『Meshuga Baby』(2022)は、まさしくロックンロール台頭前夜のおもむき。

エマはロンドンの歌手で、ボズウェル・シスターズとかアンドゥルーズ・シスターズとかあのへんの世界を意識したような女性三人組コーラス・グループで活動しているとのこと。ソロ作品でも同様に過去へのリスペクトに満ちた眼差しを見せてくれているわけなんです。

この新作でのきわめて個人的なお気に入りは、エマのヴォーカルもいいんだけど、実を言うと伴奏を務めているジャズ・ピアノ・トリオ。なかでもピアノのジェイミー・サフィアの弾きかたや全体的なアレンジが大のぼく好み。

ジェイミーはエマと共同で本作のための新曲も書いているあたりからみて、どうもアルバムの音楽監督的な役目をやっていそうな気がします。Spotifyアプリでは各曲のプロデューサー名のところが空欄になっているので、わからないんですけれども、たぶん。

強めのビートが効いている曲がいくつもあって、そのなかにはラテン風味がしっかり聴けたり、ブルージーでファンキーだったりもけっこう香り、それらって突き詰めれば<あのころ>のアメリカン・ミュージックだとごくあたりまえにあったものだから本作でのエマらも自然に表現しているということ。意識せずともですね。

特にラテン・ビートとブルーズがかなり多いのはたいそうぼく好みのジャズ・ヴォーカル・アルバムといえて、そういった方向性をエマと共同でジェイミーが牽引したんじゃないかという気がするんです。その意味でも完璧にレトロなジャジー・ポップス・アルバムでしょう。

レトロといっても本作は淡々おだやか系ではなくて、抑揚や変化があって強く派手な表現もわりと聴けるんですが、エラ・フィッツジェラルドなんかもそうなることが多かったし、エマのヴォーカルにも濃淡というか緩急がしっかり効いていて、なかなか楽しい歌手ですね。所属しているというプッピーニ・シスターズも聴いてみようかな。

(written 2022.7.22)

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