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メタル&ラテンなさわやか山口百恵 〜 三浦祐太郎

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三浦祐太郎 / I'm HOME

おとといのプレイリスト『山口百恵 やまぐちももえ』にも一曲収録されていた三浦祐太郎。山口百恵の子です。祐太郎はずっと音楽活動をしていますが、最初百恵の子であることを伏せていたんだそうですね。それでもライヴでときどき百恵のレパートリーを歌うこともあったみたいですけど、「百恵の子として歌手をやっている以上逃れられない宿命であり使命だ」といよいよ覚悟を決めて、百恵ソングブック・アルバムをつくろうと決心して臨んでできあがったのが2017年の『I'm HOME』です。

祐太郎のこのアルバムを聴いての最大の印象は、清心ということです。サウンドも歌声にも邪心がなくて、素直にストレートに歌っているのが好印象です。百恵の声というか歌にはかなり翳があったといいますか、言ってみればスレたような大人のフィーリングが常にこもっていたと思いますし、そういった(落ち着きはらったような)暗い翳が百恵の歌の大きな魅力でもあったわけですけど、祐太郎の声にはもったいぶったような印象がなくさわやかなのがぼくは好きですね。

そんなところ、1曲目の「さよならの向こう側」から聴きとることができます。宮永治郎の手がけたアレンジもいいですけど、最大の美点だと思えるのは祐太郎のストレートで伸びやかな声です。歌いかたというか節まわしにもナイーヴでさわやかな感性が生きていて、聴きやすいし、とてもいいですね。2曲目「秋桜」も同じような感じがします。そして、これら二曲ともロック・サウンドですね。

ロック・サウンド、それもややハードな、というかヘヴィ・メタルっぽい要素も聴きとれるというのもこのアルバムの特色でしょうか。4曲目「イミテイション・ゴールド」、7曲目「曼珠沙華」などは特にそうです。「曼珠沙華」なんかちょっとメタリカ感ありますしね。百恵オリジナルから大きく離れ独自発展を遂げているといえましょう。それでも祐太郎のヴォーカルにはソフトな感触があったりするのもおもしろいところです。

やわらかいというか柔軟な歌いかたができる祐太郎のさわやかなヴォーカル資質は、ラテンなアレンジを施された曲でも生きています。3「謝肉祭」、6「プレイバック Part 2」がそうです。前者はややフラメンコなノリ、後者はサルサっぽいでしょうか。個人的には「プレイバック Part 2」のこの超絶グルーヴィな感じがとても気に入りました。ピアノとギターを活かした宮永治郎のアレンジも最高ですし、ノリがいいし、いやあ、こりゃみごとです。

(written 2020.5.30)

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