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フュージョン全盛期サウンドの再来 〜 スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメス、ロニー・キューバー、WDRビッグ・バンド

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Steve Gadd, Eddie Gómez, Ronnie Cuber, WDR Big Band / Center Stage

ガッド・ギャングふたたびというわけなのか、ドラマーのスティーヴ・ガッドがかつての盟友エディ・ゴメス(ベース)、ロニー・キューバー(バリトン・サックス)と組みドイツのWDRビッグ・バンドと共演した今年一月二月録音の『センター・ステージ』(2022)がとってもカッコいい。WDRビッグ・バンドは好調が続いていますよね。

演奏されているものもガッドにとってかつての得意レパートリーだったものが多く、それをやはり旧知のマイケル・アベネのアレンジ&指揮でビッグ・バンドに転用、三名の演奏ぶりもあざやかで、しかもあんな感じだったのがここでは基本フル・アクースティック・サウンドに変貌しているのは現代的といえるでしょう。

ビッグ・バンドのほうはジャコ・パストーリアスのワード・オヴ・マウス・バンドに似た響きをしているなと感じます。それに(ほか二名はそうでもないけど実は)だいたいロニー・キュバーのバリサクが大好物なんで、聴こえてきただけでマジ気持ちいいんですよ。こないだ亡くなったばかり。

1曲目「Signed, Sealed, Delivered」(スティーヴィ・ワンダー)だけでもう大満足。スタッフ時代のレパートリーですね。エリック・ゲイルそっくりのギターはだれ?と思ったらケルン出身のブルーノ・ミュラー。ブルーノはアルバム全編で大きくフィーチャーされ、これだよこれ!って快哉を叫ぶ典型的フュージョン・ギターを聴かせてくれます。

リズム&ブルーズ、ソウルなどをベースにジャズ・マナーでインストルメンタル展開した、っていうのはそもそもむかしから変わらぬガッド・ミュージックの特質で、本作でもそのまま活きています。この上なくグルーヴィだし、こういうのが2022年の新作として聴けるとは最高にうれしい。

アルバムのクライマックスは1曲目のほか4曲目「Che Ore So」だと思えます。ガッド・ギャングで演奏されたきれいなメロウ・ソウル・バラードで、ここでも文句なしに甘くて美しい。途中トロンボーン・ソロをはさみ直後にそのままロニーのバリサクが入ってくる瞬間なんか、なんど聴いてもトロけそう。

(written 2022.10.18)

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