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ロバート・クレイの新作はゴスペル・アルバムかな

(3 min read)

Robert Cray Band / That's What I Heard

もとからブルーズ一本槍のひとでもなかったロバート・クレイ(Robert Cray) だけに、今2020年の新作『ザッツ・ワット・アイ・ハード』がこういったゴスペル仕立てになっているのもむべなるかなと思います。オープニング1曲目の「エニイシング・ユー・ウォント」はそれでもオリジナル新曲のロック・ブルーズですけど、2曲目「ベリイング・グラウンド」はセンセショナル・ナイティンゲイルズが歌ったトラディショナル・ゴスペルですもんね。

ロバート・クレイ・ヴァージョンの「ベリイング・グラウンド」にはブルーズふうなところもまったくなく、ストレートなゴスペル解釈になっているのがかえって聴きものなんですね。ビートもトラディショナル・ゴスペルのボン、ボン、っていうあれで、クレイはギターは弾かずにヴォーカルに徹しているのがまた好感度大。カルテットみたいなバック・コーラスをだれが務めたのか知りたいところです。

ここまでストレートなゴスペル・チューンはこれだけとはいえ、今回のアルバムではゴスペル・ソングのカヴァーが数多く収録され、アルバムの色調の基本を形成しているんですね。3曲目「ユア・ザ・ワン」(ボビー・ブランド)、5「ユール・ウォント・ミー・バック」(カーティス・メイフィールド)。また7「プロミシズ・ユー・キャント・キープ」(キム・ウィルスン)も曲調はゴスペル・バラードですよね。

故トニー・ジョー・ワイトに捧げたという8「トゥー・ビー・ウィズ・ユー」も敬虔なスピリチュアル・ムードが漂っていますし、これら一連の曲でのクレイはきわめて真摯に歌い尽くしているのがわかって、この音楽家の姿勢が胸に迫ります。いつもと同じおなじみのギター・トーンにも慈しみがあふれているじゃないですか。ヴォーカルやギターのサウンドそのものにこもるそんな空気感をぼくは聴きとっているんですね。簡潔にいえばマジメでストレート。それが音に出ています。

それだからこそ、強烈なトランプ大統領批判の4「ディス・マン」(オリジナル)なんかがこれまた響いてくるんですね。もっとも個人的には歌詞の意味をあまり考慮しない聴きかたをするほうなんで、サウンドのファンキーさやギター・リフ、ソロの楽しさを感じて、いい気分です。そう、政治的メッセージじゃなく音楽として聴きごたえのある曲ですよね。この曲のギター・ソロはかなり聴けると思います。

愉快なダンス・ナンバーである9「マイ・ベイビー・ライクス・トゥ・ブーガルー」(ドン・ガードナー)のファンキー・ビートも楽しいし(ギター・ソロはなし)、さらにアルバム中特に耳を惹いたのは節目の6曲目「ホット」とクローザーの「ドゥー・イット」です。どっちもアップ・テンポのファンキー・ブルーズなんですけど、楽しさが爆発しています。くわえてギター・ソロも弾きまくりで爆裂、最高ですね。後者にはレイ・パーカー Jr が参加しているらしいですが、この音色はクレイですよね?

(written 2020.5.1)

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