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もはやフュージョン・バンドではない 〜 イエロージャケッツ

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Yellowjackets / Parallel Motion

アメリカ西海岸のあまりにも典型的なフュージョン・バンドだったイエロージャケッツ(1981〜)。いまだそのころのイメージのまま認識をアップデートできていないリスナーもいらっしゃるように散見しますが、実をいうとこのバンド、もはやそうではありません。

現在のイエロージャケッツを聴けば、フュージョン・バンドの面影なんかどこにもなく、はっきりいってゼロで、完璧なるコンテンポラリーなストレート・ジャズ・バンドへと変貌しているのがわかるはず。1990年にボブ・ミンツァーが加入して舵を切ったよう。

ご存知のようにぼくはフュージョン好きなので、80年代のイエロージャケッツもお気に入りでした。知ったのは人気絶頂だった1984年の渡辺貞夫さんが全国ツアーのバック・バンドとして起用したことで。バンド結成のきっかけだったロベン・フォード(g)もいっしょでした、あのときは。

あのころと比較すれば、中心人物のラッセル・フェランテ(key)だけを軸に、ほかは全員メンバーが代わったイエロージャケッツ。現在四人編成で(キーボード、サックス、ベース、ドラムス)、結成から数えると40年を超えたという超長寿バンドとして現役活動中なんですね。

以前このブログでも前作の『ジャケッツ XL』(2020)をとりあげて書いたことがありました。ドイツのWDRビッグ・バンドとの共演で、アクースティック&重量感のある現代的なストレート・ジャズを展開した立派な内容で、とても感服したのをよく憶えています。

今作はカルテット編成のみで演奏するというバンドの原点に立ち返り、ポップな音楽性という柱は40年経っても変わらず維持しながら、やはりコンテンポラリーなジャズ・サウンドを聴かせてくれていて、これもなかなか充実した内容です。四人だけでやるのはデーン・アルダースン(b) が加入した2016年の『Cohearence』以来。

一曲だけ、歌手のジーン・ベイラーをフィーチャーした8「イフ・ユー・ビリーヴ」があるにはあります。アーシーなゴスペル・フィールをも感じさせるヴォーカルで、曲はフェランテのオリジナル。歌にオブリでからむミンツァーのサックスも聴かせますね。

ストレートなコンテンポラリー・ジャズといっても、イエロージャケッツがやっているのはフュージョンを一度フルに通過したからこそ到達しえた境地で、聴きやすさ、ぼんやりしているとなんでもないような音楽と思えてしまうような明快なグルーヴとノリのよさ、適度な電子楽器の使用法など、80年代フュージョンのエッセンスが現代ジャズとして昇華されているのを感じとることができます。

(written 2022.9.15)

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