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パール・ジャンゴっていうバンドがあるみたい

(4 min read)

Pearl Django / With Friends Like These

以前「猫のジョアンのペット・プレイリスト」っていう文章を書いたでしょ。Spotify のサービスで、猫とか犬とかのペットにあわせたプレイリストを自動生成してくれるというものです。

これを書いたときからずっと頭にあったんですけど、このプレイリストの1曲目、パール・ジャンゴ(Pearl Django)という音楽家の名前も初見にしてずいぶん気になって、実際聴いてみたらジャンゴ・ラインハルト&ステファン・グラッペリのフランス・ホット・クラブ五重奏団の音楽ソックリなんですよね。音は最新のものですから現代のバンドかなにかに違いないわけで、こりゃなんだ?だれだ?と思ってクリックしてみたら、パール・ジャンゴの『ウィズ・フレンズ・ライク・ジーズ』(2017)というアルバムが出ました。

これの話を今日はちょっとしたいんです。パール・ジャンゴはアメリカはワシントン州タコマで1994年に結成されたバンド。現在はシアトルに拠点を置いて、アメリカやヨーロッパで活動しているんだそう。当初三人だったのがいまはクインテット編成(アコーディオン、ヴァイオリン、ギター、ギター、ベース)で、やはりジャンゴ・ラインハルトらがやっていたああいった古き良きスウィング・ジャズ・ミュージックの再現を目指しているんだそうですよ。

パール・ジャンゴ、1994年結成で、CD アルバムもすでに10枚以上あるということで、もはやベテランというに近いバンドなのかもしれないですね。ジャンゴ・ラインハルト&ステファン・グラッペリらがやったああいう音楽は彼ら亡きあとも受け継がれていて、折々に世界でひょっこり顔を出していますけど、パール・ジャンゴみたいなストレートなバンドがあったことをぼくは今年になるまで知りませんでした。「猫のジョアンのペット・プレイリスト」、Spotify の自動生成によるものですけど、教えていただけてありがたいことですね。

アルバム『ウィズ・フレンズ・ライク・ジーズ』でもそんな彼らの音楽性が全開。レトロで古くさいものかもしれませんが、この種の音楽は現在でも一定数の愛好家が存在し続けています。ぼくもそんなひとり。1曲目「フロイド・ホイト・ライズ・アゲン」のイントロ〜テーマ演奏を聴いただけで頬がゆるみますよね。テーマ部はヴァイオリンとギターの二重ユニゾンで、これがもうえもいわれぬ1930年代っぽさをかもしだしているのがうれしいです。ソロはアコーディオンから。それもなつかしい音色でなごませてくれます。

それになんたってこのスウィング感、リズムへの軽快なノリですよ。主にベースとリズム・ギターのカッティングがそれを表現していますけど、ジャッジャッジャッって、これが快感なんです。つっかかるところなどなく、なめらかにスーッと一直線に流れスウィングするこのビート、まさにジャンゴらがやっていたマヌーシュ・スウィングのフィーリングそのまんまじゃないですか。アコーディオンが入るのがパール・ジャンゴならではのオリジナリティですね。

アルバム全体がこの感じで進み、独特のあのムードを表現してくれているのが楽しくうれしいですね。なかにはちょっぴりのエキゾティック・ニュアンスもあったりして、それもいい味付け。フランスやヨーロッパのサロンで気楽にちょっとくつろいでいるときの、そんな雰囲気の音楽をムード満点に聴かせてくれるパール・ジャンゴ。メンバー各人の腕前は確かだし、アンサンブルもよく練られていて、ソロも上々、文句なしじゃないですか。今2020年の2月に新作『シンプリシティ』をリリースしたばかりみたいですよ。

(written 2020.2.23)

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