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ブラジリアン・ジャズ・スキャット 〜 レニー・アンドラージ

(4 min read)

Leny Andrade / Leny Andrade

bunboniさんに教えてもらいました。

ブラジルの歌手、レニー・アンドラージ(Leny Andrade)1984年のライヴ・アルバム『レニー・アレンドラージ』が真夏にピッタリということでbunboniさんが紹介なさっていて、ぼくも熱帯夜が続いていた八月なかばに聴いて、とてもいいなと感じましたが、文章化するのは涼しくなったいま九月も下旬です。以前も書いたけどメモがたまっていて順番があるからで、書き上がったもののストックもたまっていますから、ブログに上がるのは寒くなってからでしょう。

レニー・アンドラージはブラジリアン・ジャズ・シンガーといっていいと思いますが、この1984年ライヴは少人数のコンボ編成。たぶんこれ、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスと、たったそれだけじゃないですかね。ライヴだけあって、かなりこなれたナチュラルな演奏ぶりで、スムースなスキャットを駆使するレニーのヴォーカルがいっそう映えます。

はじめて聴くからよくわかっていないんですけど、レニーってこういう、勢いというか雰囲気、ムード一発で歌う歌手なんですかね。細かくていねいにフレーズをつづっていくといったヴォーカル・スタイルとはちょっと違うかなと、そういう印象を持ちました。ライヴだからってこともあるでしょうか。

だからバンドの演奏とともにハマるときはいいけど、雑になりやすい資質の歌手かもしれませんね。この1984年ライヴではいいほうに出ている、成功しているなと思えます。それはバック・バンドの、こちらはかなりていねいにつむぐ繊細な演奏ぶりが支えているんでしょう。ライヴならではのスポンティニアスな雰囲気も満点でいい感じ。

洗練されたコード・ワークを駆使したジャジーで有機的な演奏ぶりで、特に中心になっているのはピアノとギターでしょうね。ソロは主にギターリストが弾いていますが、だれなんでしょう、かなり細かいフレーズを息長くうねうねとくりだす、うまいひとだと思います。ピアノはバンド・サウンドのキーになっているし、全体の牽引役かなと感じます。

1曲目でゆっくりとしたテンポのボサ・ノーヴァっぽいノリでレニーが歌いだし、まあまあかなと思っていたら、ワン・コーラス終えたところでバンドの演奏がパッと止まり、一瞬の空白のあとレニーが勢いよくスキャットをはじめるや否やバンドがアップ・テンポでなだれこんできます。そこからは疾走感満点で、レニーのスキャットが終わったらギター・ソロ。そのへんで、あぁ、これはいい、すばらしいジャズ・ヴォーカル・ライヴだと実感しますね。

どの曲でもレニーはジャジーなスキャットを駆使していて、爽快に乗りこなしているし、ブラジリアン・ジャズ・フュージョンみたいなバンドの演奏も聴きやすくてみごと。ブラジルの曲が並んでいるなかで気を引くのは9曲目の「ディス・マスカレード」。もちろんリオン・ラッセル(アメリカ合衆国)の書いたものです。前後と違和感なくおさまっていて、もとからそういう曲調のものだからなんですけど、みごとな選曲ですね。レニーはこれだけ英語で歌っています。

(written 2020.9.21)

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