見出し画像

あまりにもコテコテなブルーズ・ジャズ 〜 フレッド・ジャクスン

(4 min read)

Fred Jackson / Hootin’ ’N Tootin’

どっちかというとブルーズやリズム&ブルーズの世界で活動したらしいテナー・サックス奏者、フレッド・ジャクスン。ジャズ・ミュージシャンとしてもあまり知られていない存在で、ぼくだってこないだブルー・ノート・レコーズの公式ソーシャル・メディアが知られざる佳作ということでアルバムを紹介していたのが出会いでした。

そのフレッド・ジャクスン、どこの世界でも活動歴はサイド・メンバーとしてのものばかり。それなもんでいまや歴史の忘却の彼方にいるんだと思いますが(といってもまだ存命らしい)たった一つだけ、ジャズのソロ・リーダー作品を残しました。それがブルー・ノートの『フーティン・ン・トゥーティン』(1962)。

CDリイシューの際に拡大版も出たようでSpotifyにもありますがそれは無視して、1962年のオリジナル・アルバムに沿って話を進めると、全七曲。伴奏はオルガン・トリオ(ギター、オルガン、ドラムス)。

フレッド・ジャクスンも無名なら、この三人のサイド・メンバーだって、アール・ヴァン・ダイク(オルガン)、ウィリー・ジョーンズ(ギター)、ウィルバート・ホーガン(ドラムス)って、みなさん知ってました?ぼくが無知なんでしょうか?

1962年2月5日のワン・デイ・セッションでアルバムは録り終えられています。七曲いずれもフレッドのオリジナル。といっても変哲のないシンプルなリフ・ブルーズばかりで、これがいかにもくっさ〜い、60年前後のブルー・ノートにいくつもあったアーシーでソウルフルなファンキー路線まっしぐら。時代を感じさせる内容なんですね。

で、前から言っていますように、あの時代のこういったブルーズ・ベースのハード・バップで、鼻をつまみたくなりそうなほど臭くて下品なファンキーさ、アーシーさ、ブルージーさをふりまくものが、ぼくは大好物。

1曲目からそんなムード満開で飛ばしていますが、2曲目のスロー・ブルーズ「サザン・エクスポージャー」なんてねえ、なんですかこの臭さ!特にギターのウィリー・ジョーンズの弾くフレーズが、世にこれ以上のブルージーなプレイはないと言いたいくらいで、ブルーズ・ギターリストだってここまでやらないよねえ。

ハモンド B3を使ったオルガン・プレイもアーシーさ満開なら、ボスのテナー・サックスのブロウぶりも悶絶的です。いくら1960年前後のブルー・ノートにこの手のソウルフルなジャズが多かったとはいえ、ここまで匂いがキツいものもめずらしいのでは。

この手のハード・バップは、ある意味ロックやソウルと親戚です。もとをたどると1940年代のジャンプ・ミュージックから来ているものですからね。40年代ジャンプからはリズム&ブルーズが産まれましたが、同時にジャンプはビ・バップ(からつまりモダン・ジャズ)の母胎でもあって、リズム&ブルーズはソウルに変化したばかりか、ロック誕生にもつながったんですからね。

このへんの類縁関係を、きょう話題にしているフレッド・ジャクスンの作品『フーティン・ン・トゥーティン』を聴いていると、いまさらながら再認識します。嫌うひとは嫌うスタイルの音楽ですが、好みはともかく、アメリカ大衆音楽史の流れのなかで必然的に抽出された一滴であったことは忘れてほしくありません。

21世紀のいまとなっては、もうこんなジャズをやるひとはいなくなりました。

(written 2021.10.16)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?