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ソノラの国境沿いから 〜 リンダ・ロンシュタットほか

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v.a. / Feels Like Home: Songs from the Sonoran Borderlands ~ Linda Ronstadt’s Musical Odyssey

米西海岸で活躍したリンダ・ロンシュタットが育ったアリゾナ州南西部メキシコ国境地帯ソノラでの思い出を、歌でつづる回顧録みたいに仕上げたのが本作『フィールズ・ライク・ホーム:ソングズ・フロム・ザ・ソノラン・ボーダーラインズ』(2022)。

これが最高なんですよね。USAとメキシコがクロスするあたりのもの、西海岸の音楽家はむかしからとりくんできたものですが、ここではリンダの叙事詩っぽい個人的感慨もこもった音楽になっているということで、いっそう胸に迫ってくるものがあります。リンダがここまでラテン・ルーツを歌で表現したのは初めてのはず。

アルバムはライ・クーダー&ラロ・ゲレーロで幕開け。その後収録曲はどれもすばらしく、テックス・メックスというかラテン・ボーダーの音楽にしみこむ情緒感をしっとり伝えてくれます。やはり西海岸ジャクスン・ブラウン昨夏の新作からの再演もあり。今回のヴァージョンのほうがメキシカン・フィールが強く、イスパニック系移民がテーマの曲なのでより沁みます。

個人的にはリンダ自身がヴォーカルで参加している(といっても何年の録音だろう?パーキンソン病で引退しているはずなんだけど)数曲(2、5、8、9)がずいぶんいいなと感じます。特に「アクロス・ザ・ボーダー」(w エミルー・ハリス)とか「アイ・ウィル・ネヴァー・マリー」(w ドリー・パートン)とか。

トータル一時間半CDなら二枚組サイズになりそうな大きなテーマではありますが、今作は、でもプライベートな内容でもあるので、あっさり39分というレコード尺におさめてささっと聴かせるあたりも工夫が効いていますね。肩肘はらない自然体という感じで、こうした歌の数々はリンダにとってはあたりまえの日常だからでしょう。

(written 2022.12.1)

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