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ちょっぴりトルコ風味なジャジー・ポップス 〜 カルス

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Karsu / Karsu

両親ともにトルコ出身、アムステルダム生まれ&在住のトルコ系オランダ人というカルス(・ドメンズ)は、ジャズ・ポップのシンガー・ソングライター兼ピアニスト。2019年の『Karsu』でぼくは出会いましたが、そこまでにすでに三作のアルバムをリリースし、オランダ国内だけでなくトルコでも話題になっているみたいです。

アルバム『Karsu』では、1曲目が完璧なるジャズ・ナンバー。カルスは英語で歌っています。そういうのはほかにも数曲ありますが、1曲目がいちばんストレートにジャジーですね。と思ったら、これはほんのプレリュードに過ぎず、たったニ分程度で終わってしまい。

2曲目がなぜかのレゲエ。そりゃもう鮮明なレゲエで、どこもジャジーでなくターキッシュな要素もゼロという。中南米のリズムを使った曲がアルバム中ほかにもありますね。このようなことは、ジャズだとかオランダ、トルコといったことにかぎった話ではなく、ラテン・リズムは全世界に拡散していますので、特筆することでもないかと。

3曲目以後も、英語で歌うジャジーな曲とトルコ語のポップス(かすかにサナートふう)が交互に出てくるといった様子。カルスがピアノの腕前を発揮するといった場面はほとんどなし。ほぼヴォーカルに専念していると言えます。

そのヴォーカルにはかなりジャジーな味があって、さらにそこはかとなくトルコのサナート風味も、かすかにですけど、ただよっているのが出自を思わせるこの歌手の独自の持ち味ですね。ときおり強く激しく声を張り上げたりする場面もありますが、多くはスモーキーに仄暗くたたずんでいるといったムードで。

情報によれば、なんでもこのカルスの2019年最新作は、両親の出身地で自身のルーツにして、歌手としての自分を応援してくれているトルコのファンのために、そこに向けて、制作・発売されたものなんだそうで、それにしてはトルコ音楽風味が薄いかもなと思いますが、トルコ語でたくさん歌っているのはそういうわけだったんですね。

そんなせいなのか、あるいはまだ才能開花途上にあるからということなのか、やや中途半端な印象を受けないでもないこのアルバム『Karsu』。個人的にはトルコをそんなに意識せずに、ジャジー・ポップスに専念してみたらどれくらいの音楽が仕上がるかちょっと興味が湧く、おもしろい歌手です。

(written 2021.6.24)

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