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情熱的に、さわやかに 〜 リンダ・シカカネ

(3 min read)

Linda Sikhakhane / An Open Dialogue (Live in New York)


ンドゥドゥーゾ・マカティーニ今年の新作『In The Spirit of Ntu』で知ったやはり南アフリカ共和国のジャズ・サックス奏者、リンダ・シカカネのそのプレイぶりにおおいに感心し、自己名義のリーダー作も聴いてみようとSpotifyで検索しました。

すると、今2022年にも新作を出していて、それをふくめいままでに三つのアルバムをリリースしているみたいです。ぜんぶじっくり聴いた結果、ぼくには二作目の『An Open Dialogue(Live in New York)』(2020)がいちばんのお気に入りとなりました。イキイキとしていて実にいい。プロデュースはこれもンドゥドゥーゾ。

ずいぶんスピリチュアルな内容で、瞑想というか祈りをささげているようなサックス吹奏とヴォーカル・コーラスが聴こえます。1960年代のアメリカン・ジャズ的っていうか、こういうの、要はジョン・コルトレイン由来の世界なんでしょうね。

ことさらの個人的お気に入りは1〜2曲目の連続した流れ、楽しくスウィングする4曲目「Timelessness」、6「Ziyokhala Ziyotheza Sokela」でのサックス・ブロウ、そして熱量の高さを感じるラスト7「Saziwa Nguyen」。奔流のような演奏で、リンダのサックスもきわだってすばらしく、聴き入りますね。コルトレインらの時代と違うのは、熱さと同時にさわやかなひんやりクールネスもあって聴きやすいところ。

2017年の一作目からそうですが、全速力で情熱的をみなぎらせて疾走するというよりも、全体的におだやかにたたずんでいるといった風情も感じとれ、本作はライヴだけに破綻ない構築というより勢いで吹きまくるパートもあるにはありますが、そのへんの静かな空気感はまぎれもなく2020年代的な音楽の衣をまとっているというか、ジャンルや地域を超えて共通トレンドになっているものなんでしょう。

ハーモニー面やビートの組み立てなどけっこうな冒険や実験をやっているのに、前衛的な感じがせず、不思議に落ち着いてリラックスしているっっていうのがリンダの音楽の特色。おかげでなんど聴いても飽きず口あたりよく、リンダ以下バンドも充実の演奏をくりひろげているけれどあっさり味があって、それでも聴き込めばしっかりした手ごたえがあるっていう、そんな音楽ですかね。

二年前に知っていたら、間違いなくその年の年間ベスト三位以内に入れていただろうと思います。それくらいの傑作に違いありません。いや、これだったら今年のベストテンのどこかに入れたいぞっていう、それくらい。ンドゥドゥーゾが一位だから、その必要もないのか。

Linda Sikhakhane / tenor & soprano saxophones
Lesedi Ntsane / trumpet & flugelhorn
Redi Fernandez / flute
Lex Korten / piano
Jude Van der Wat / harp
Zwelakhe Duma Le Pere / bass
Alon Benjamini / drums
Gontse Makhene / percussions
Mabeleng Moholo / percussions & vocals (track 5 )
Sakhile Moleshe / vocals
Nduduzo Makhathini / album producer, vocals ( track 1 )

(written 2022.7.20)

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