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カリフォルニアへのヴァーチャルなノスタルジア 〜 ヴァン・ダイク・パークス

(3 min read)

Brian Wilson, Van Dyke Parks / Orange Crate Art

こないだなんとなくSpotifyをぶらついていて、なんの気なしにクリックしてみたブライアン・ウィルスン&ヴァン・ダイク・パークスの『オレンジ・クレイト・アート』(1995)。それまでどうとも思っていなくても、ちょっと気が向けばふらりと聴いてみることができる、それもサブスクの利点です。

実際、ぼくはブライアン・ウィルスンとかヴァン・ダイク・パークスとかそれまであまり興味を持ったことはなく、ビーチ・ボーイズなど関連バンドもちょこっとCDアルバムを買って聴いたことがあるものの、どうにもぼく向きじゃないなとしか思えなかったんですよね(実はランディ・ニューマンもそう)。

だから、なにげなく軽い気分でワン・クリックすれば流れるサブスク・サービスが普及しなかったら、『オレンジ・クレイト・アート』みたいなCDを買って聴くことなど、絶対にありえなかったと思います。でも、聴いてみたらすばらしい美しさで降参しちゃったので、人生どこに出会いがあるかわかりませんよ。

『オレンジ・クレイト・アート』、ブライアンは歌っているだけで、プロデュースもアレンジ&オーケストレイションも、全12曲中10曲のコンポジションも、すべてヴァン・ダイク・パークスなので、ヴァン・ダイクの頭のなかにある音楽をサウンド化したものなんでしょう。

このアルバムのどこがお気に入りになったか?というと、最大のものはラテン・ミュージック要素がそこかしこにわりと鮮明に聴きとれるところ。そんな部分もいかにもカリフォルニア的というか、ワーナーの本拠地があった場所から名をとって言われるバーバンク・サウンドならではなんでしょう。

特に2曲目「セイル・アウェイ」。いきなりティンバレスがかんと鳴って、曲全編でラテン・パーカッションが活用されているし、リズムもメロディ・スタイルもキューバ音楽ふう。これは大好き。ブライアンってこういう曲歌ったことあるのかな?(← なんも知らんだけ)

8曲目「ホールド・バック・タイム」もあきらかにキューバン・ミュージックからの流入色が濃いです。アメリカ合衆国音楽におけるラテン要素がある意味(中南米人のやる)ラテン・ミュージックそのものより実は好きなくらいですから。UK白人ロッカーのやるブルーズ・ロックが大好きという嗜好との共通性?

エセ中国ふうな曲もあったり、つまり多民族混在の地であるカリフォルニアの文化模様をそのまま音楽にしているといった印象。19世紀後半から20世紀初頭のアメリカ合衆国音楽への懐古的憧憬というか、このへんランディ・ニューマンの音楽とも通底しますが、ヴァン・ダイクにとっても実は経験していない未知のものだったはずのものへの、つまりヴァーチャルなノルタルジア。

(written 2022.1.2)

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