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しんどいとき助けになる音楽(18)〜 由紀さおり

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由紀さおり / VOICE II

坂本昌之というアレンジャーの存在を知ったのは坂本冬美の『ENKA』シリーズででした。なんてきれいなサウンドをつくるんだろうとビックリして惚れちゃって、結局坂本の仕事を調べて追いかけてぜんぶ聴きたいと思うようになりました。

由紀さおりの『VOICE II』(2015)もそうやって知ったアルバム。坂本がアレンジしているということで聴いてみたんです。坂本昌之は21世紀の日本歌謡界で最高のアレンジャーじゃないですか。すくなくともぼくはそれくらい惚れ込んでいます。サブスクだとアレンジャー・クレジットが出ないのは残念。

さおりの『VOICE II』は古い(主に1960年代の)非演歌系ムード歌謡曲ばかりをとりあげて、「あの時代」へのノスタルジアも込めながら、なおかつ現代的なジャジーであっさりした薄味音楽に仕立て上げたという一作。曲がどれも古いので、お若いリスナーのみなさんだと知らないものばかりかもしれません。

でもそれで問題ないんですよね。決して古くさくなんかなくてじゅうぶん聴ける内容だと思いますし、最初からこういう感じの曲だったんだねと信じ込んでもいいくらいの違和感ないできあがり。さおりの、この歌手はまえからずっとそうですが、さっぱりしたナイーヴでストレートな発声が曲を活かすことにつながってもいます。

アレンジされたサウンドがこれまたなんともおしゃれで、21世紀的なジャズ/シティ・ポップの境界線をまたいだような、すばらしく都会的なフィーリング。ここ数年流行しているサウンドを完璧に実現していて、これこれこういうのだよ、ぼくの好きなのは!とヒザを打つような会心の音楽になっています。

(written 2023.8.30)

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