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サミー・エリッキの才能

(4 min read)

Samy Erick / Rebento

bunboni さんに教わりました。

サミー・エリッキ(Samy Erick)はブラジルのギターリスト&コンポーザー/アレンジャーということで、2017年作『Rebento』がデビュー・アルバムみたいです。ジャズかショーロかっていうようなインストルメンタルなブラジリアン・ミュージックをやっているんですけども、編成はリズム・セクション(ギター、鍵盤、ベース、ドラムス、パーカッション)+四管(サックス、サックス兼クラリネット、フルート、トランペット)の計九人。

聴いた感じ、サミーはエレキとアクースティックの両方を弾くギターの腕前もさることながら、譜面を書く才能のほうがまさっているなという印象で、実際このアルバム最大の聴きどころもそこにあるんじゃないでしょうか。アルバム冒頭1曲目「Devaneio」でもいきなりアクギの音でアンサンブルがはじまりますが、その後サックスが出て、そのソロが進むにつれリズム・セクションも盛り上がってくるといった感じです。トランペット(の音がやわらかいのでフリューゲル・ホーンみたい)が出て管楽器アンサンブルが鳴る演奏後半が聴きものなんですね。

個人的に耳を惹いたのは2曲目の、ショーロというよりサンバ・ジャズな「Choro de Maria」、冒頭ビリンバウなどパーカッションの音色が印象的な、でもその後はミナス的なアンサンブル・ハーモニーを聴かせる3「Sol e Lua」、フルートのサウンドとその背後のエレピ・ヴォイシングが心地いい4「Roditi」、アフロ系のリズムがおもしろいしソロも聴こごたえある9「Lampião e Maria Bonita」あたりです。

それらではサミーのギターも聴けるけどホーン陣のソロがよくて、さらにソロ背後なんかでも聴こえる伴奏アンサンブルが本当に秀逸なんですね。かなりアレンジされているなとわかるんですけど、これがデビュー作だというサミーって何者なんでしょうね、正式な音楽教育を受けたような譜面を書くなあと思うんです。ミナス新世代らしい洗練されたハーモニーだと感じますよ。特にフルートの使いかたがいいなあ。

それでも、アルバムでぼくがことさら聴き入ったのは7曲目「Outro Lugar」とラスト10曲目「Lagoa Negra」ですね。これら二曲ではナイロール・プロヴェタをフィーチャーしていて、前者ではアルト・サックス、後者ではクラリネットと、それぞれサミーの前者はエレキ、後者はアクーティックなギターとの、ほぼデュオで演奏が進みます。

7曲目のほうではそれでもリズム・セクションや、背後に伴奏のホーン・アンサンブルが入って、ギター&サックスの情緒をもりたてているんですけど、後者は文字どおりの完全デュオ演奏。サミーの弾くナイロン弦ギターのうまあじに乗せてナイロールのしっとりしたクラリネットが切なげに感情をつづっていくさまは、まるでピシンギーニャが書きそうな(「ラメント」「カリニョーゾ」とか)ショーロ・バラードみたいで、聴き惚れますね。

(written 2020.6.17)

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