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マイルズ、91年7月のパリ同窓会ライヴ、発売されるみたい

(4 min read)

約一週間ほど前の『Louder』によりますと、マイルズ・デイヴィスが1991年7月10日にパリでやった盛大な同窓会ライヴが、『ザ・ロスト・コンサート』というタイトルで、2021年9月29日にスリーピー・ナイト・レコーズから発売されるみたいです。

ライノ/ワーナーからのリリースじゃないところが、なんだかアヤシイな〜って思ってしまうのですが(ブートレグ?そうじゃない?)、この91年7月の同窓会ライヴは、当時からマイルズ・ファンのあいだで大きな話題となってきていたもの。

なんたっていつも前向き、未来を見て、過去を決して振り返らなかった(ということになっているけれど)マイルズが、死の約二ヶ月前にパリでやったそのライヴは、ジャッキー・マクリーン、デイヴ・ホランド、アル・フォスター、ウェイン・ショーター、スティーヴ・グロスマン、チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョー・ザヴィヌル、ジョン・マクラフリンなど、過去の豪華な共演者たちを一堂に呼び寄せてセッションしたもの。

演奏曲目だって、「イン・ア・サイレント・ウェイ」「カティーア」みたいな曲ばかりではなく、なんと「ディグ」だの「フットプリンツ」だの「オール・ブルーズ」だのまでやっているんですからねえ。あのマイルズがですよ。当時ジャズ・メディアで大きな話題になっていたし、ワーナーが公式録音したということも聞いていました。

しかし公式発売はいまだなし。ブートレグCDでなら、以前からリリースされていて、それはしかもワーナー公式から流出しただろうことが間違いないような高音質。『ブラック・デヴィル』という二枚組で、ぼくも90年代末か21世紀はじめごろにお茶の水のディスクユニオンで見つけ買いました。

その『ブラック・デヴィル』の収録曲は以下のとおり。

Disc 1
1. Perfect Way
2. New Blues
3. Human Nature
4. All Blues
5. In A Silent Way
6. Katia

Disc 2
1. Out of the Blue / Dig
2. Watermelon Man
3. Penetration
4. Wrinkle
5. Footprints
6. Jean Pierre

いちばん上でリンクした『Louder』の記事によれば、今回発売されるものもまったく同一内容。だからこれが1991年7月10日当日のセット・リストそのままだったんでしょうね。最初の三曲だけマイルス・バンドでの演奏で、4曲目から同窓会セッション・ライヴ。

ブートCDでずっと聴いてきたコンサートなので、今回正式?発売されるとなってもべつにどうといった感慨もないんですが、それでもこれでまた多くのファンの耳に届くことなるかもしれませんからね。サブスクにも入るんじゃないでしょうか。

『ドゥー・バップ』みたいな作品も一部録音済みの1991年7月になって、「アウト・オヴ・ザ・ブルー」「ディグ」だの「オール・ブルーズ」だの「フットプリンツ」だのを、それも過去のバンド・メンバーを迎えて演奏するマイルズの気持ちはどんなものだったか?と思いますが、自身の強気の発言とは裏腹に、実は音楽的に過去をよく振り返っていた人物。

晩年になってこだわりも消え、昔話もよくするようになっていたマイルズです。1991年というとモントルー・ジャズ・フェスティヴァルで、クインシー・ジョーンズの指揮下、ギル・エヴァンズがアレンジを書いた過去のオーケストラ作品を再演するという企画だってやりましたしね。

いっぽうでこのパリ同窓会ライヴには、現代的ファンク・チューン化した「ウォーターメロン・マン」もあったり、またこれでしか聴けないプリンス提供曲「ペネトレイション」もやっていたりと、なかなかに興味深い内容ではあります。

(written 2021.8.9)

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