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伝統ファドのなかにある新鮮味 〜 アルディーナ・ドゥアルテ

(3 min read)

Aldina Duarte / Roubados

bunboniさんに教わりました。

ポルトガルのファド歌手アルディーナ・ドゥアルテの最新作『Roubados』(2019)は、完璧なる古典ファドの味わいで、重厚な感じ。ファド歌手も新感覚の新世代がどんどん出てきていて、個人的には好感をいだいていますが、(やや歳上とはいえ)こういった伝統派もいいですね。

『Roubados』は、錚々たる古典ファド歌手たちのレパートリーのカヴァー集ということで、こんな企画に挑もうというのもアルディーナらしいところなんでしょうね。ギターとギターラ(ポルトガル・ギター)だけっていう、それもやはりファド伝統の伴奏を貫いていて、歌いかたも重厚そのもの。

こういった伝統派のファドなら、べつにアルディーナを聴かなくてもすぐれた先輩がたくさんいるわけですが、それでも現役世代らしい一種の軽みのようなものを、ぼくはですね、随所に感じることができて、そんなところが旧世代にはなかった新味かなと思ったりします。

伴奏でも、このアルバムだと特にギターラの金属弦のキラキラした響きには一種の明るさがあって、地中海的な陽光の日差しとでもいいますか、キラメキ、軽快さをぼくは感じるんですけどね。もとからそんな音色の楽器ではありますが、ファドで使われるのが定番となって以来ちょっと違うイメージでとらえられてきたように思います。

アルディーナのヴォーカルも、曲によってはほんのちょっとの明るさ、軽快さを感じる瞬間もあって、伝統派というか従来的なファドのステレオタイプなイメージとして抱かれがちな暗さ、重さばかりではないところに好感を持ちます。ファドという音楽は聴く季節やタイミング、こちらの体調を選ぶところがありますが、アルディーナのこの作品だとそんな懸念も無縁です。

そういった新解釈や現代風味もまじえながら、それでも「孤独を歌にする」といったような古典ファドの張りつめた緊張感や味わいはしっかり健在。つらくさびしいときなどに聴くとおおいになぐさめられます。アルバム・ラストの一曲にだけアントニオ・ザンブージョがゲスト参加しています。

(written 2021.6.5)

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