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研究発表の聞き方【初級編 - 大切な6つの意識】

研究室に配属されると、他の学生さんの研究発表を聞く機会が増えてきます。他の人の発表を聞く機会からは非常に重要な学びを得ることができるのですが、ただ漫然と流し聞くだけでは得るものも得られませんし、いくら集中して頑張ったつもりでも、ポイントを押さえて聞くことができなければ、疲れるばかりで効果的な学びが得られません。そこでこの記事では、できるだけ楽に、かつ効果的に発表を聞く方法を紹介します。
※この記事は、著者のブログ「駆け出し研究者のための研究技術入門」の記事「効果的に人の発表を聞くための6つのポイント」のリライト版です。

意識すべき6つのポイント

発表を効果的に聞くための技術にはいくつかあるのですが、それらの技術を習得する前に備えておくべき意識があります。そのポイントは以下の6つです。

  1. 詳細理解よりも大まかな話題展開の把握を優先する

  2. 話題の要点と切り替わりに敏感になる

  3. しばしば出てくる専門用語の意味を確実に理解する

  4. 具体イメージで話を捉える

  5. 自分なりに説明を解釈して次の話を予想する

  6. 主張の根拠を確認する

1つずつ確認していきましょう。

詳細理解よりも大まかな話題展開の把握を優先する

研究発表を聞くときに絶対に欠かせないのは、細かい部分の説明に囚われすぎることなく、大まかな話題の展開、すなわち「あらすじ」を見失わないようにすることです。あらすじさえ理解できれば、細かい内容については後からでも質問をして理解を深めることができます。

今見ているスライドの説明内容だけに意識を向けるのではなく、それまでのスライドで説明された内容と結びつけながら聞くということが大切です。「細かいところは分からなくてもいいから、とにかくここまでの話とどう繋がっているのかは絶対に理解しよう」というつもりで聞くとよいでしょう。

話題の要点と切り替わりに敏感になる

単に話された内容を漠然と聞くだけではあらすじを把握することは難しいです。とくに、研究発表に慣れていない人の発表を聞く場合には、さらに困難です。なぜなら、「今の話題が何で」、「その話題について結局何が伝えたいのか」が明確に述べられず、さらには話題の移り変わりの表現も曖昧で、いつのまにか話題が変わっていた、という場合が多いからです。

そんな中でも話題と話題の要点をなるべく正確に把握するうえでは、「話題が切り替わるタイミング」を逃さないことが重要です。発言内容の中に含まれる接続語に気を配るとうまくいきやすいです。「つまり」「したがって」などは要点を言おうとしている可能性が高いです。「そこで」や「しかし」などは話題の切り替わりを示す言葉ですので、話題の変化が起こる可能性が高いです。このような接続語が出てきたら「話題」と「話題の要点」を頭の中でアップデートする意識を高めましょう。

しばしば出てくる専門用語の意味は確実に理解する

専門用語が出てきたときに、「難しそうな言葉が出てきたけど、よくわからないからとりあえず見なかったことにしよう」と考えるのはよくありません。とくに、その専門用語が複数回出てくる場合には、その用語はあらすじの把握において重要なキーワードである可能性が高いので、放ってはおけません。その専門用語の意味がわからないままだと、その先の話を聞いたところでさらに意味がわからないことになってしまう恐れがあるのです。

発表のなかで大切な意味内容を含んでいるからこそ、専門用語が使われているのです。専門用語の解説をしっかり聞き漏らさないようにしましょう。説明がない場合にはその場でインターネットで調べたり,直接本人に確認をして勘違いのないようにしましょう。

具体イメージで話を捉える

専門的かつ慎重に説明された内容は抽象的になり過ぎていて、実感として理解しにくいことが多々あります。そこで、抽象的な説明は、自分なりに「たとえば~ということかな」とか「この分野でいう~のことかな」のような具体的なイメージとして捉えましょう。

そのイメージを持ったうえで説明を聞き進めれば,もし理解が間違っていた時に気づきやすいという利点もあります。その具体的なイメージに自信がない場合は、「この説明は、〜のようなものだと理解して構わないでしょうか?」と質問すればよいでしょう。

自分なりに説明に解釈をして次の話を予想する

ある話の説明がひと段落つきそうなときには、自分だったらそれをどのような主張に繋げるかを考えて予想する癖をつけましょう。予想と同じような話題展開がなされた場合には、安心して次の話を聞けますし、自信にも繋がります。記憶にも残りやすそうですね。もし違う話がなされた場合には、自分に勘違いがないか、なぜその話者はそのような話に持っていったのかをを考えてみましょう。

わからなければ、たとえば、「私はこの様に解釈したのですが、その解釈は成り立たないでしょうか?」か、もしくは、「この問題に対してはこのようなアイデアの方がよいと思うのですが、そちらではなぜだめなのでしょうか」などのように質問してもよいでしょう。自分の考えに自信がある場合はあえて質問をせず、自分の研究テーマにしてしまうのもありですね。

主張の根拠を確認する

「〜だと考えます」とか「であると言えます」のように何かに解釈を加えて結論づけた主張がなされたときには、その主張の説得力を支える根拠が何かを整理してみましょう。根拠が明確でない場合は、「そのように解釈できる根拠はどこにありますか?」「その方法が適切だと考える理由はなんでしょうか?」「その結論はどの結果をうけてなされたものでしょうか?」などのように質問をするとよいでしょう。論理の穴を見抜きましょう。研究の論理の穴を見抜くことから新しい研究が生まれます。

まとめ

この記事では、研究発表を聞く機会を学びに変えるための聞き方のポイントを紹介しました。上記の6つのポイントが自然に意識されるように、まずは意識付けから始めましょう。上記の意識を持ったうえで、さらに効果的に発表を聞くための技術については、次の中級編の記事で解説しています。

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