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油絵の始め方 道具編

こんにちは、おじさんです。

最近、いろいろ近況が落ち着いたので、久しぶりに油絵をかきはじめました。
久しぶりにやってみるとやっぱり楽しくて。
でも油絵って敷居が高いな〜、道具が色々必要で難しいよ〜って言われがちじゃないですか。

でも、色々それなりに油絵を齧ってきて、おじさんは「初めて絵を描くなら、初心者向けの技法は絶対油絵!」と思っているのです。

なので、おじさんもまだまだ拙くはあるのですが。
予備校や大学で教わったことと、独学でやってきた知識をもとに、油絵をどうやって始めたらいいのかとか、コツを、自分なりに書いてみようかと思います。


まず、油絵ってどういう絵?っていうと。
油と顔料で練った絵の具を、絵を描く用の油(水の代わりのように使います)で溶いて、布のキャンバスに描く絵です。

わかりやすく、小学生の図工の時間にやる、水彩絵の具と比べながら書いていきますね。
水彩絵の具は油絵具、水はペインティングオイル、画用紙は布キャンバスです。

特徴としては、絵の具が乾くのが他の水彩画やアクリル絵の具にくらべて、圧倒的に遅いです。
絵の具や描き方、気温にもよりますが、最低でも3日以上はかかると思っていいです。
図工の時間に扱うような絵の具と比べると、ねっとりして、べたべたして、重たくて。
キャンバスの上で乾いていない絵の具がどんどん混ざってしまったり。
ちょっと今までに触れた絵の具とは触り心地が違うかもしれないですね。

油絵具は乾くのが遅いので、絵を描くのに、とっても時間がかかります。
ただそれは油絵のメリットでもあります。
とっても時間をかけて、絵に取り組むことができるんです。それが、良いところ。
絵を描き疲れて寝てしまっても、起きてから翌日の続きをゆっくり始められます。
紙ではなくしっかりした固い布に描くので、いくらでも上から絵の具が塗り重ねられます。
少し失敗したくらいなら、上から描き直してしまえば簡単に絵を潰せます。
だから、おじさんは、絵の初心者こそ油絵をやってみて欲しい、と思うのです。
何度でも、自分の理想の絵が出来るまでじっくり時間をかけてやり込むことのできる画法だから。

そうして何度も何度も塗り重ねて出来上がった画面は、油絵独特の重厚感を獲得します。
この独特の美しさを長く保持できるのも、油絵のすごいところです。

詳しく話すとキリが無いし、西洋絵画史の授業を寝ていたことがバレるので、簡単に説明すると。
まず油絵の元祖はテンペラ画と呼ばれるもの。数百年経っても色褪せることもひび割れることもしない、とにかく長い時を超えることの出来るすっごい画法です。
神様の姿を描くため生まれたテンペラ画は、その権威を伝えるために、とにかく長い時代、劣化せず、その美しい色味を保持し続けることが必要とされたのです。
ただ、その分手間がかかりますし、表現の幅も狭いです。(絵の具の特性上ぼかしが出来なかったり、今の油絵のようなマチエール、でこぼこもありませんでした)
だから、そのテンペラ画を簡略化して普及しやすくしたものが生まれ、それが現在の油絵につながっています。

今はお手軽に道具が買えますが、そういうルーツのある画法なので、油絵の画材は下地から絵の具まで、本当に入念に作り込まれています。
数年もすれば経年劣化してしまう画用紙や、日に当たると色が飛んでしまうインクや絵の具とは、耐久力という一点に関しては比べ物になりません。
油絵元祖のテンペラ画に比べると、現在の油絵は描き方次第で20〜30年で少しずつ劣化が始まってしまうらしいですが…
それでも、油絵具を一から作ったりして、絵画組成の勉強をすると痛感します。(材料さえあればそこまで特別な道具はいらないのでやってみるといいと思う)
油絵の技術は美の保存、価値の存続、その為の努力の結晶であるのだと。

初めて描いた絵も、すごく良く出来た絵も、うまく出来なかった絵も、全て等しく、未来に価値を持つ可能性として保存できる。
いつか将来、過去の絵を振り返った時に、その時の美しさのままキャンバスが残っていてくれる。
自分の子供とか、友達とか、更には自分の知らない未来の人にまで、描いたままの美しさが届く可能性を残してくれる。
美を存続すること。創作をするにあたってすごく大切で、忘れられがちな価値観だとおじさんは思っていますし、油絵が持つ他には無い魅力のひとつだと思っています。


さてさて。難しい話はこのくらいで。


油絵を始めるにあたっての、道具。
おじさんが最低限必要なものを解説していこうかなと思います。やってみて不便をかんじたら買い足せばいいだけ。自分に必要なものは自然と揃っていきますから、お気軽にね。

・キャンバス
安く済ませたくて自作する人も多いけど、おじさんは買う派です。めんどくさいので。
木枠に布を張った完成品が画材屋さんで売られてるので、それを買えばいいです。

手前の小さめがF10、奥のがF15です。

大きさや形は色々ありますが、あんまり小さいと描きにくいので、最初はF10〜F15(サイズ規格のこと。キャンバスの裏に書いてあります。)くらいがおすすめです。大体50cmくらい?値段は世界堂価格で2000円前後くらい。

・筆

洗い忘れで固くなったものはこの間捨てました。おじさんは薄く上重ねする用に習字用の筆も数本使っています。


油絵用の豚毛の筆の用意が必須です。
豚毛の筆は、図工の時間に扱う筆に比べて、毛が固くてしっかりしています。
よくある水彩筆だと、油絵具やキャンバスの固さに勝てず、ぐにゃぐにゃ曲がってしまい、うまく描けません。

本数はあればあるだけいいですが、最初は三本以上はあると便利です。油絵具って洗うのが大変なので、単純に筆洗と筆を変える手間の話です。
(使ったら遅くても次の日までには洗いましょう。食器用洗剤で手に押し付けるみたいにゴシゴシ洗ったあと、お湯で流せば平気。放置すると筆が固まって使い物にならなくなるので注意!)
油絵具は乾かないので、慣れないうちはキャンバスの上で意図せず他の場所の色が混ざってしまう事故が頻発します。
なので、筆の汚れる速さは結構早いです。色ごとに筆を変えられるくらい筆を持つのが本当はベスト。
よほど立派なものでなければ大体300円〜600円くらいで用意できると思います。

筆も平筆や丸筆、大きさが色々ありますが、使い分けできるよう、なるべく種類をバラバラにして選ぶといいです。細い線を引く為に、小さめの平筆は持っておくといいです。

あとは、可能ならちょっと高いけれどハケは買ったほうがいいです。序盤のかたちづくりや、ちょっと失敗した時に画面を消したり、結構大活躍です。
ただ、硬めのキッチンペーパーとかで代用できなくもないので、必須とは言い切らないかな。
でも、あったほうがいいです。
ティッシュはべたついてキャンバスにくっついてしまうからおすすめしない。

・ペインティングオイル

ラベルに名前が書いてます。10cmくらいの小さい瓶のものもあります。


水の代わりに絵の具を溶くのに使うものです。油絵具コーナーに瓶入りのものがあります。
これも、たくさん種類があるので色々試してみてほしいですが、最初はペインティングオイル(使いやすいようにブレンドしてある初心者向け油らしいです)って書いてあるのを買えばいいです。
写真サイズで1700円くらい?な気がします。

ただ、これは、結構ネトネトした油で塗り重ね向き。もし使ってみて重く感じたら、テレピンと書いてある油を買うといいです。(おじさんは殆どテレピン一本で描いてます)
テレピンは、一番サラサラした油です。あまり重く塗り重ねない描き方や、下書きの影付けなんかにも向いてますし、キッチンペーパーや布に染み込ませて絵の具をごっそり拭き取ったりもできます。
あとテレピンのほうが若干安いです。
オイルにもさまざま種類があるので、少しずつ色々試すのが良いですよ。


・パレット
正直🎨←この木のパレットは要りません。混色スペースが足りないし、手入れが面倒だし。
学生時代は破って捨てられる紙タイプのパレットを愛用していました。画材屋さんで売ってます。

https://www.yumegazai.com/Product/hh-121264?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=max&gclid=Cj0KCQiAnsqdBhCGARIsAAyjYjQYL72SyKVuOunNyAfOYEd-GksszIPZ_cCehhCEsCAXxw6IHSRtmJwaAjw2EALw_wcB

ただ、今は…あんまり褒められた話じゃないですが、床にビニールを敷いてチラシ紙だの、段ボールの切れ端だのをパレット代わりにしています。読み終わったジャンプをパレット代わりにしている猛者も知ってます。
ぶっちゃけ、(ただ絵を描くのに限った話であれば)油が滲みなければ何でもいいので…そこまでこだわるポイントではないと、個人的には思います。

・絵の具

これでもかなり少ない方。一時期はこれの五倍くらいありましたが全部使わなくて固まったので捨てました…

これが選んで一番楽しいポイントで…一番金がかかるポイント。
画材屋さんにいくと、色々なメーカーの、色々な絵の具が置いてあり、最初はかなり戸惑うかと思います。
まずメーカーに関しては、おすすめはマツダスーパー、安いのが良ければクサカベ(クサカベなら最安のランクのカラーで大体一本300円くらいで済んだ記憶。マツダスーパーは600円くらいから。一本2000円の高級絵の具も存在します)です。

(ただ後述するテールベルトという絵の具は、マツダスーパーを買って下さい。クサカベのテールベルトは同じ名前ですが中身が違います。所謂テールベルトとは全く違う色が入っていますので注意)

そして、色選び。勿論あればあるだけいいですが、水彩絵の具セットみたいな、赤黄緑青…という揃え方はしなくてもいいかなと思います。

ここからは、完全におじさんの独断と偏見になります。もし迷うなら参考にしてください。
最初に買っておくとよい絵の具は、バーントシェンナ、ローアンバー、テールベルト、シルバーホワイトの四種。これに追加で好みの色をいくつか買えば充分と思います。

まず、ホワイト。白だけでもさまざま種類がありますが、個人的には一番扱いやすかったのはシルバーホワイトです。下塗りから上書きまで引っ張りだこの汎用性の高いホワイトです。
大体一番安いのはチタニウムホワイトという白い絵の具なのですが、結構白の発色が強く、混色したら絵の具が全部真っ白になっていた、画面で白が浮き過ぎる…みたいな失敗がありがちな絵の具。まあまあ玄人向けです。
少し値が張りますが、ここはシルバーを買っておくと安心。

そして残りの三色ですね。バーントシェンナ、ローアンバー、テールベルト。
どれもパッとラベルや色見本を見ると茶色…?暗い色だな…と思うかもしれませんが。
この三色さえあれば、理論上はものの陰影は全て表現できる…とのことです。予備校の先生曰く。

これにはちゃんと理屈があって。
まずバーントシェンナ。ただの土色にしか見えないけれど、これ、実は暗い赤なんです。
ローアンバーは暗い黄、テールベルトは暗い青緑。
この三種は暗くてすごく根本的な三原色なんですね。

上からローアンバー、バーントシェンナ、テールベルト。テレピンで引き伸ばすと分かりやすい。


陰影の練習の為に、ホワイトを使わずにこの三色だけで絵を描け…なんて予備校時代に言われたことがあります。

それ以前に教わった先生にも、おじさんは鉛筆の下書きの上に一番最初に載せる絵の具は、この三色から作るよう教わりました。
この三色でベースの暗さを作り、そこにホワイト等の色を入れて光を起こしていき、立体を組み立てていくイメージ。こればかりは言葉ではうまく伝わりませんが…
おじさんの中ではこの三色が基本の色、みたいなイメージなんですよね。

まあそこまでストイックにしなくてもいいですが、絵に陰影をつける時はこの中から選んで混色していくとスムーズにできると思います。



ただここは本当に描いてみないと、自分がどの絵の具を好んで使うのかなんて分からないので。(おじさんだってバーントシェンナなんか今や殆ど使わないし)
色によって値段もまちまちだし、おじさんの言うことは無視して直感で好きなものを買ってもいいと思います。ほんとに。
気に入った色やメーカーが見つかると、それだけで絵が楽しくなります。
ここは、人それぞれに楽しんで絵の具コーナーを探検してみてほしいな、という気持ち。

必須アイテムは以上です。ここまで揃えればひとまず描けると思います。
他にあると便利なものを軽く紹介。

・筆洗器
筆を洗って漬けておくことのできる金属容器です。中には別売りの筆洗油を入れて使います。
お湯で洗う前に容器に筆を漬けておいて、中の網でゴシゴシ洗ってあげるとそれだけである程度汚れが落ちてくれます。
先述の通り、油絵は洗い落とすのが大変なので、専用の道具があると便利。
予備校だと必須で買わされますが、筆が少ないうちはお湯と食器用洗剤で充分代用可能。

・速乾メディウム
美大受験で大活躍アイテム。絵の具に混ぜると絵の具が早く乾くジェルです。せっかちさんにおすすめ。
絵の具に混ぜると色が透明っぽくなり、絵の具が柔らかく伸びがよくなり、素の絵の具よりは少し扱いやすくなります。
…ひび割れやすくなるというデメリットもありますし、「混ぜると色が安っぽくなる」と嫌う人も結構いますが。
逆にこうした速乾メディウム特有の質感を好んで使っている人や、単純に足りない絵の具のかさ増しに使っている人もいます。
そこは単純に好みですし、便利な道具ではあるので、試しに使ってみるといいと思います。

・ジェッソ


石灰の混ざった、水彩画用の下地絵の具です。油絵にも使えます。
キャンバスって結構表面がツルツルしているので、それが気に入らなければこいつで下塗りをしてやればいいです。
ツルツル感がなくなり、マットな質感になります。
きっちり乾ききったらその上から絵を描きましょう。乾いていないジェッソが油絵具と混ざるとひび割れます。
うまく塗るにはちょっとコツが必要。
最初はでこぼこになってしまうと思いますが、縦横斜めと一筆で絵の具を馴らし、均等に塗り重ねて頑張って平らにしていきましょう。
わざとでこぼこにして絵に質感を加えるやり方もあります。ただ、何も考えず下地に凹凸を加えると、後から色がそこだけ乗らなくて困ったりと絵の進行に支障が出ます。
やるなら、絵の全体像を先に計画してから慎重にやりましょう。

・イーゼル
…おじさんは持ってません。壁に立て掛けて描いてます。ただ不慮の事故で倒れてキャンバスと床がめちゃくちゃになったりとか、そういう事故防止は大切です。本当に。

・ブルーシート
これも部屋の汚れ防止。床に小さなブルーシートを敷くの、おすすめです。美大時代は、友達全員が作業場に敷いてました。
油絵具は本当に、本当に、乾くと取り返しがつかないので、気をつけて下さい。
もしブルーシートのない場所を汚したらテレピン(さっき紹介したペインティングオイルですね)をぶっかけて全力で歯ブラシで洗ってください。二度と取れなくなる前に。

他にも、下書きは鉛筆より木炭のほうが体感が近いので木炭デッサン道具一式あるといいかもよとか、固まった絵の具のひっぺがしとかにペインティングナイフあるといいよ、とか…

おすすめの道具、は尽きないのですが、必要なものはまあこのくらいと思います。


油絵は楽しいです。
筆や絵の具、下地絵の具からキャンバスの布選びまで、長い歴史のある画法である故に道具選びから既に探究は尽きません。
世界堂等の大きな画材屋に行くとその膨大な画材量に圧倒されてしまいますが。
そこから自分に合ったものを探す最初の指針に、この文章がなるのなら幸いです。


教える程の技量はありませんが、簡単な油絵の手順なんかも、いずれ書いてみようかと思います。
よかったら、読んでね。ではでは、おじさんでした。
またねー。

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