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『Little Glee Monster Live Tour2023Join Us!』から見えてくるボーカルグループの難しさ

1月28日に大阪オリックス劇場で開催されたLittle Glee Monsterの2023ライブツアーJoin Us!を拝見しました。
結成僅か2ヶ月という6人体制の新生リトグリとして、新メンバーは非常に良くやっていると思います。
ライブ時間は1時間20分という短いものでしたが、今の彼女達が精一杯出來る姿を全力で見せたという印象を持ちました。僅か数ヶ月前にはステージのこちらにいてリトグリの姿を見る側にいた彼女達が2ヶ月後にはステージに立ちライブを行なっているという人生の大きな転換を迎えたわけです。これからの長い人生をステージを提供する側の世界で生きていくという選択をした彼女達がリトグリのメンバーとしてどのように活躍していくのかは、非常に興味深いものがあります。

しかし、僅か2ヶ月とはいえ、もうステージを提供する側に立った彼女達は同時にプロでもあるのです。そこには対価を払って見に来た観客に歌やパフォーマンスを提供するという役目があります。
またLittle Glee Monsterというグループが新メンバーを迎えての新しい局面や今後、どのような道を辿っていくのか、という部分に於いて、かつてのハーモニーとの明らかな違いやコンセプトの違いを感じましたので、新メンバーの歌声の解説と共に書いていきたいと思います。

個人なのか、箱なのか

今回、私は彼女達の歌声を生で拝見して、以前のグループとしてのサウンドと個々の持つ歌声についての大きな違いを感じざるを得ませんでした。それがいいとか悪いとかではなく、正直な印象として、私が慣れ親しんだサウンドとは違うのだ、ということをあらためて自分の中に自覚した、というのが素直な感想と言えます。
私が「立体的多重構造」と名づけた彼女達のサウンドは、建物そのものが根本から違ったものになったのだ、という印象を持ちました。メンバーの構成が変わればサウンドが明らかに変わるのは当然のことと知識でわかっていたことを実際に会場で彼女達のハーモニーに触れ、体感したということになります。それほど、以前のハーモニーとは似て非なるものが、今のリトグリのハーモニーと言えるでしょう。
それを否定する気持ちは持ちません。ただ、以前のハーモニーに慣れ親しんだ人達がそのままファンとして残るかどうかは疑問を持ちました。
但し、日本には「箱推し」という独特の文化があります。
これは、個人それぞれを応援するのではなく、グループそのものを応援する、即ち、Little Glee Monsterというグループそのものを応援する、というスタンスです。そこには、メンバーが変わろうと、サウンドが変わろうと関係なく、Littel Glee Monsterという、日本で唯一といえる本格的ガールズボーカルグループのコンセプトそのものを応援していく、というファンの存在があります。メンバーがどのように変わろうと、このグループが目指す音楽があり、コンセプトがあり、活動形態がある限り、それらのものを大切に守り続けていこうとするメンバーを応援する、というスタンスなのです。
これは、結成後、今までも何度もメンバーの脱退というものを繰り返してきたリトグリというグループの宿命とも言えるものがあるのかもしれません。
女性がグループ活動を長年続けていく、ということは、男性のそれよりも遥かに難しいものがあります。なぜなら、女性は精神的な成長や恋愛、結婚という人生の変化による精神的影響をそのまま受ける要素が大きく、それは人生の選択そのものを直結するからです。
特に10代から20代にかけては、肉体的変化と共に大きく精神構造も変化していきます。その時期の特定の期間に抱いた気持ちが未来永劫変わることがないとは決して言いきれません。女性は男性よりも変化を好む傾向にあり、他者や環境による影響も強く受けます。それらによって多感な時期に自分の中の音楽や精神性というものの変化を受け止め切れるかどうか、ということも活動自体に大きな影響を与えていくのです。

金管楽器、木管楽器、そして弦楽器

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