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ボーカリスト三浦大知の魅力

割引あり

歌手の職業病

私は、どちらかと言えば、アーティストの歌声を専門に書いている音楽評論家なので、「歌」が上手かったり、「歌声」が魅力的でないと、評論家として「書きたい」という食指が動きません。

クラシック畑で「音楽を教える」仕事をしていた私が、J-POPのレビューを本格的に書こうと思って最初に選んだアーティストが三浦大知でした。
それまでの私の中に、J-POPどころか、R&Bなどは、ほぼ聴き慣れない音楽で、最初は、本当にチンプンカンプンだったのを覚えています。
それでも、私が純粋に書きたい、と思ったのは、彼の歌声が「変わった」からでした。
「歌声を変えた」「発声を変えた」ということをファンである友人から聴いたとき、「歌」に関する仕事をしてきた私は、純粋に興味を覚えました。
歌手が発声を変えうのは、並大抵の努力では出来ないからです。
ですが、発声を根本から見直した歌手は、どの人も非常に魅力的で、その後、その歌声で一生歌い続けていくことが出来るのです。

J-POPの歌手の多くは、地声で歌っている人が多く、発声を専門的に身につけている人は、非常に少ないです。
たまたまミックスボイスで歌えている、という人も多く存在するぐらい、デビュー前にしっかり発声の訓練をしている歌手は少ないのが現状とも言えます。
ですから、デビュー後、長い歌手生活の中で、声帯炎になったり、結節やポリープというような病気を持つ人も少なくありません。
そうなると、歌手は満足に歌えなくなります。
この数年、活躍しているアーティストが何人も声帯の炎症によって、ツアーを中断したり、手術をしたり、休養をしたり、ということを耳にするようになりました。
それらは、どれも無理な発声を長年行ってきたことが原因と言えます。
歌手の故障は、多くが「発声法の誤り」によって生じているのです。
これは、2時間、3時間のライブを年中、ツアーとして行っている歌手にとっては職業病の1つでしょう。
「歌」は声帯を酷使します。
僅か30分ほど歌っただけでも、声帯は真っ赤になって充血するのです。
それを回復させる(充血を取る)には、最低でも2時間の休養が必要と言われています。
実際に、声帯は、話し声を出すだけでも、1分間に数百回以上、声帯を擦り合わせているのです。
ましてや、それが3分とか5分とかの歌になれば、また、高い音から低い音まで出す歌になれば、1曲の間に何万回、何十万回という振動を繰り返すことになります。
そうなれば、1曲歌うだけでも、どれほどの負荷を声帯にかけているかは、想像が着くでしょう。
それを歌手は、何時間もライブで続け、何十年も歌い続けてくるのです。
故障しない方がおかしいぐらいです。
ですから、歌手にとって、正しい発声法、自分の声帯に合った発声法を身につけるというのは、自分の声帯を故障から守る唯一の方法なのです。

発声法を見直すということ

三浦大知は、近年、非常にボーカリストとしての実力を蓄えていると感じます。
三浦大知と言えば、その卓越したダンスパフォーマンスによって、他のアーティストを圧倒しており、ハンドマイクで歌っても息が乱れないことで有名ですが、彼が話すように、「歌は、歌うことでしか鍛えられない」のです。
近年の彼の歌声を聴いていると、彼が、身につけた発声法を使って、さらに数段、ボーカリストとしての高みに足を踏み入れていることがわかります。
その力を支えているもの。
それが、「発声」と言えるでしょう。

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