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広瀬香美LIVE"WINTER QUEEN 2024"ライブレビュー

昨夜、Billboard LIVE OSAKAで行われた広瀬香美のLIVE"WINTER QUEEN 2024"を拝見してきました。
簡単にライブレビューを書かせて頂きます。
彼女のことは、私が現在、連載している青春出版社の公式noteの企画「人生を変えるJ-POP」の方で、今後、扱うことになっていますので、ここでは、簡単に感想を書かせて頂きます。


『ロマンスの神様』に刻み込まれた歌声

私は彼女のライブを拝見するのは、これが初めてです。
彼女の楽曲と言えば、『ロマンスの神様』が余りにも有名。
クラシック界出身の私でもこの歌だけは耳にしたことがある、というぐらい、当時、日本中を席巻した楽曲の1つですね。
175万枚の売り上げを持つ楽曲です。

J-POPを主体に書く音楽評論家になってこの数年。年間20回以上のライブに行って多くのアーティストを拝見してきました。
その中でいわゆるベテランと呼ばれる層のアーティストを拝見すると、音楽業界で生き残れる人の共通項が見えてきます。

1つは、年齢に関係のない圧倒的な歌声。
アーティストである限り、これは絶対的必須条件であるはずです。
しかし、生身の「声帯」という楽器を使って歌う歌手の場合、肉体的老化は必ず「声帯」にも及びます。
ベテランになり、数々の経験を積み、歌唱力や表現力が増すのに反比例するかのように、声帯の老化は進みます。
この肉体的老化と歌手は一生、歌い続ける限り、戦い続けなければなりません。
50代になっても、60代になっても、70代になっても、ファンはその人の歌声を求め続けます。
ファンの耳に残る歌声は、その曲がヒットした時の歌声。
その歌声が楽曲のタイトルと共に耳の中に刻み込まれているのです。
そのイメージと歌手は一生戦い続けなければなりません。
これは、ヒット曲を持った歌手の宿命でもあるのです。
広瀬香美の『ロマンスの神様』も、そういう楽曲の1つと言えるでしょう。

実は、私は、過去にも現在にも彼女の歌声をほぼ聴いていないままに、今回、ライブに出向きました。
ですから、私の中に彼女の歌声に対するイメージというものがあまりなかったのです。
この数年に1度か2度、テレビの音楽番組で彼女の歌声を聴いたぐらいのイメージしか持っていませんでした。
昨夜の彼女の歌声が、私の中の「広瀬香美」というアーティストの歌声として、インプットされたということになりました。
その印象は、過去に音楽番組で聴いた歌声と何の遜色もないものだと思ったのでした。
ところが、今回、このレビューを書くにあたって、彼女の若い頃の歌声はいったいどうなっているのだろう、と思い、あらためて1993年当時の『ロマンスの神様』を聴き直したのです。
すると、そこには、大きな違いがあることに気づきました。
この違いは、加齢による声帯の変化ではなく、発声そのもの、歌い方、そのものが大きく違っていることに気づいたのです。

歌い方の変化

青春出版社の連載の方で、彼女については詳しく書かせて頂きたいと思いますので、ここでは簡単にポイントだけ書きますが、大きく違うという印象を持ったのは、歌声の発声ポジションでした。

彼女の経歴を調べてみると、デビュー前にアメリカでボイストレーニングを積んだことがわかります。
ですから、デビュー後に発声が変化したのではないことがわかるのです。
しかし、若い頃の歌は、メロディーラインの音域の変化によって、発声ポジションがあっちに行ったり、こっちに行ったりするのがよくわかります。
この発声ポジションというのは、いわゆる歌声を当てる、響かせるポジションのことなのですが、それが低音域、中音域、高音域、とそれぞれの場所で明らかに異なっているのです。
それが若い頃の歌の1つの特徴でもあるのですが、よく言えば、弾力のある歌声が飛び跳ねている、という印象なのです。
これに対し、近年の彼女の歌声、さらには昨夜、拝聴した彼女の歌声は、一本の線上に綺麗に響きが真っ直ぐに乗っている、という印象を持ちます。
非常に直線的で真っ直ぐに響く歌声は、1本の帯のようにストーンと鋭く届いてくる、という印象なのです。
どの音域も綺麗に1つの線上に乗っかり、若い頃のように飛び跳ねている、という印象はありません。
非常にパワフルでありながら、綺麗な真っ直ぐな濁りのない歌声がこちらまで届いてくる、という印象でした。
ですから、どの曲もパワフルでありながら、整った歌声の粒がストーンと胸に落ちてくる。
非常に綺麗に整った歌声であるにも関わらず、力強い歌声、という印象だったのです。

若い頃の歌声よりも、明らかに進化していて、非常に魅力的な歌声になっていると感じました。

冒頭3曲を続けて、大きな息を吐きながら、「今回のセトリはしんどい」と大阪弁で話す彼女は、非常に人間的で、このフランクさと前向きな明るさが堪らない魅力になっている、と感じました。

「人間的魅力」に溢れている。
そして、「進化し続ける歌声」
これらの要素が、長く歌い続け、多くのファンに支持されるアーティストの共通項です。

高音の続くセトリは、本当に体力を使います。
ですが、この”高音”も歌手広瀬香美の大きな魅力の1つなのです。

彼女のパワフルでピンと張った歌声が、今後、どのように進化していくのか、非常に楽しみにしたいと思います。


                                                                                                                                                                                                                                                                                     


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