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稲木紫織のアート・コラム ”Arts & Contemporary" Vol.1

『書物の宮殿が教えてくれたこと』

 たまたま本書を読書中の2017年11月8日にその死が報じられ、まさに"巨星、馳つ"の思いを深くしたロジェ・グルニエ(1919-2017)の随筆集。お気に入りの一冊である。

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 『フラゴナールの婚約者』を読んで雷に打たれたようになり、愛読してきた。さらに思い出されるのは、その前年に亡くなったミシェル・トゥルニエ(1924-2016)である。

 哲学者のジル・ドゥルーズとパリ大学の同級生。哲学者でジャーナリストのトゥルニエを、名前の発音ゆえによくグルニエと間違えたものだった、失礼にもほどがあるが。

 子供の頃から本が好きで、小学生の昼休み、一人で本を読んでいると自閉的だと注意された。本人は最高に楽しくて、自分でも一人が好きなのかと思っていたけれど……。

 グルニエの本書は本について描かれているが、「読むことは、書くこと以上にとはいわないまでも、少なくとも同じくらい、私生活としてのふるまいである」と彼はいう。

 「ある本と、いわば二人だけになれる」のだからと。そうか、私は一人になりたいのではなく、本と二人になりたかったのだ。"書物の宮殿"に足を踏み入れてやっと気づいた。

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現代音楽、古楽、写真、美術、本について気まぐれに、真摯に語ります。
時には、レクチャーやトークのレポートも。

稲木紫織/フリーランスライター、ジャーナリスト
 
桐朋学園大学音楽学部卒業  
音楽家、アーティストのインタビュー、アート評などを中心に活動
著書に「日本の貴婦人」(光文社)など
                    

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