見出し画像

つれづれ日記06  明日からは雨というので…

お散歩に出た。
京急の逗子葉山駅から細い県道を10分ほど歩くと、渚橋の信号にぶつかる。

画像1


渚橋の交差点をまっすぐ進むと葉山マリーナ。右に折れて、橋を渡れば逗子海岸。
子どもの頃、夏になると家族で何度も海水浴に来た海だ。
仕事が休みのたびに家族を小旅行に連れ歩くのが、何よりの楽しみだった父の面影がよみがえる。
砂浜に降りようとするところに、毎回迎えてくれる『太陽の季節』の記念碑もあの頃はまだなかった。

画像2


海岸には、密とは言えない程度の子連れのママたちや、ウインドサーフィンに興じる若者たちが、楽しそうに歓声を上げていた。海から吹く風が心地いい。

画像3

画像4

波打ち際のブロックに腰掛けて、しばらくの間、昨日から読みはじめた本を開く。
村上龍の5年ぶりの長編小説『ミッシング 失われているもの』。
老いに差しかかったせいなのか、自分の内へ内へと向かい、現実と幻想のあわいを行き来する不思議な世界観が村上龍的でなく、未だ彼の新境地を探っている段階。

本を閉じて波打ち際をそぞろ歩き、渚橋の交差点を葉山マリーナの方角に向かっていると、目の前に忽然と古い木造の屋敷が現れて、懐かしさでいっぱいになる。

画像5

画像6

創業300年を誇る、あの有名な葉山日陰茶屋。
「本日休業」との看板もコロナ禍のせいか。
今から100年以上も前、アナーキストの大杉栄が恋人の新聞記者・神近市子に刺された日陰茶屋事件はあまりにも有名で、何度も映画にできないかと夢想した題材である。妻と新しい恋人伊藤野枝との四角関係の末に、男の首を切りつけた神近は傷害罪で2年の実刑を受けて服役。出獄後衆議院議員として活躍した神近のその後の人生と、震災直後に再婚した野枝とともに権力によって惨殺された大杉の運命はあまりにも対照的だった。

画像7

画像8


鐙摺(あぶすり)葉山港と葉山マリーナをゆっくりと散策して、気がつくと家を出てから3時間近くが過ぎていた。

画像9

そろそろひと休みして、コーヒーを飲みながら本の続きを読もうと、渚橋のふもとにある「なぎさ橋珈琲店」に入っていくと、満席で諦め家路につくことに。
帰り道に見つけた紫陽花の美しさに、来週は鎌倉の明月院に行ってみようか。

画像10

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?