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宮本輝はやっぱりすごい

連ドラの仕事が一段落して本棚を見ると、読もうと思って買っていた本が山積みになっていた。先週は暫しのモラトリアム期で、出来るだけ本を読もうと思って、どれから読もうかなと手に取ったのが、宮本輝の骸骨ビルの庭。
その一連は偶然ではなく、この本こそが、今、私が読むべき本だったんだなと思える。ちょっと長いし、古い本だしなあ、もっと別の実用的な本から読むべきだったかなあと思いながらも読み進め、一昨日に読了し、昨日は長い余韻の1日だった。
宮本輝の作品は、青春時代に貪るように読んだ。
久しぶりに読んで、改めてこの作家から自分がどれほど影響を受けたかを思い知らされた。
運命的に初心に返り、自分にしか出来ない仕事を、自分にしか出来ないことを成し遂げたいという気持ちを抱くことが出来た。たいしたことは出来なくてもいいから、とにかく自分にしか出来ないことを。

戦後の大阪で、親のいない子供達を育てた二人の男の、決して偽善でもなく仏でもない成り行きとその生きざまと、骸骨ビルで育った子供達それぞれの人生とが、ビルの住人を立ち退きさせる為に東京からやってきた中年男性の日記形式で綴られている。
その数ヶ月分の日記の中に、これでもか!という程、人間の本懐が描かれている。
あらゆる登場人物を客観的に見つめると、あちこちに自分との共通点がある。
多かれすくなかれ誰でも、ずるかったり怠け者だったり、自分や人を裏切ったり裏切られたりする。
善人であろうと決意してなれるものではないと思い知らされながら生きている。

今、少しだけ時代が足踏み状態になり、読書や映画観賞に時間を割ける人が増えたこと。
これも単に歴史の、一連の偶然ではないんだろうなと感じた。


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