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『逃げるは恥だが役に立つ』の感想

昨日は新春スペシャルドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を見た。2016年に放送された人気ドラマの続編で、私は最初の放送の時は見ていなかったんだけど、少し前にパラビで見て、4年遅れでハマってしまった。

『逃げ恥』は星野源さん、新垣結衣さんたちキャストの魅力や、エンディングの恋ダンスの面白さはもちろんだけど、私にはやっぱり契約結婚という設定を通して「結婚って何?」「家事労働ってどうなの?」ということを一つひとつ問い直していくストーリーがとても面白かった。

今回は働く女性が子供を産み育てるときに直面する問題や、男性の育休取得、年齢や容姿をあげつらうルッキズム、選択的夫婦別姓問題など、「いまそこにある見えない差別」に光が当てられていたように思う。

男性同士・女性同士の恋愛関係を描くときも、オネエキャラといったドラマでありがちな見せ方にせず、その人の仕事ぶりや思いやりを通して、普遍的な「人としての魅力」を描いているところも、とてもいいと思った。

私が個人的に共感したのは、石田ゆり子演じる独身キャリアウーマンの百合ちゃん。病院で子宮癌の告知を受けて、治療の詳しい説明のために家族と一緒に来るようにと言われたけど、一緒に行ってくれる身内が見つからないというシーンに、自分も似たような立場なので、本当によく描いてくれました! とテレビの前でブンブン相槌を打った。世の中には色んな生き方をする人がいて、家族の形も色々なのに、色んな場で親子・夫婦という「ご家族」の存在を求められてしまう。普段はちゃんと社会の一員として生活しているのに、ふとしたときに「おひとりさま」の自分が世間が用意した標準から外れていると思い知らされる。そのときの切なさったらない。

このドラマは独身の人を意味なく茶化したり、お決まりの恋愛・結婚というゴールを用意したりもしないところもフェアに感じる。今回は2時間ドラマだったから主役以外のエピソードは少なかったけど、いつか百合ちゃん主役のスピンオフ・ドラマが見たいな。

「男らしさの呪縛」に踏み込んだのも、今考えるべき旬のテーマだったと思う。物語の中盤、出産間近のみくりに代わって家事をこなそうとする平匡に、家政婦さんを雇って「これからはまわりの手も借りてやっていきましょう」と告げる。その言葉に、思わず涙をこぼす平匡。そのときの会話。

みくり「つらかったですね」
平匡「…つらかったのかな」
みくり「つらいに決まってますよ。家事を一人で引き受けて、仕事にも追われて」
平匡「だけど、女性の方が…みくりさんの方がつらいんだし」
みくり「私はつらいってたくさん言ってます。平匡さんもつらいときはつらいって言ってください。男だって女だって、つらいときはつらいですよね」
平匡「…つらい…つらかった」

何気ないことだけど、みくりに「つらかったですね」と言われて、平匡が「つらかったのかな」と自問するところがとても良かった。言葉を一度自分の胸で受け止めて、時間をとって自分が感じている感情に気がづいていくというところが。つらさを無視して生きることが「男らしさ」だという、これまでの呪縛から解放されたような、繊細でやさしいシーンだった。

私はドラマを見るときに、誰が何をどう考えて、どんな思いを込めて描いたのかに興味が向いてしまう。『逃げ恥』の脚本家は野木亜紀子さん。米津玄師による主題歌「Lemon」をきっかけに『アンナチュラル』から見始めて、『MIU404』『コタキ兄弟と四苦八苦』(←私のイチオシ!)『空飛ぶ広報室』と、この数カ月野木ドラマを追いかけていて、今年秋に公開された映画『罪の声』も映画館に観に行った。疲れた時に録画を見返して元気をもらっていた『重版出来!』も野木さんの脚本だったと知って、ますますファンになった。

野木亜紀子さんのドラマは、それがコメディでもサスペンスでも、人に対するまなざしのか温かさ、公平さがあると思う。聞かれることのなかった言葉を聞き、日の当たらない場所にいる人たちの姿にスポットを当てていて、見終わったあと「知らせてくれてありがとう」という思いがわいてくる。

三が日も今日で終わり。テレビもいいけど、明日からちゃんと活動しよう。

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