氷川丸2

心臓の標本

  蠢く意識、囀る軀、触れる会話、凪がれた視線。
  僕は僕たらしめるこの船に於いて、間違いなく生きてきた証だ。
  世界は驚くほどに広いが、此処はこんなにも狭い。
  狭い故の看視される環境が、存外に心地よかったりしている。

  さぁ、此処が僕の心臓の標本。

  須らく見よ、始まりの世界を。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?