読書記録91(失敗の科学)

・研究によれば、人は失敗を恐れるあまり、度々 曖昧なゴール を設定する。たとえ達成できなくても、誰にも非難されないからだ。失敗する前から、面目を失わずに済むよう逃げ場や言い訳を用意しているので人は失敗を隠す。他人から自分を守るばかりでなく、 自分自身からも 守るため。
・「クローズド・ループ」とは、失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態。
・何か失敗したときに、「この失敗を調査するために時間を費やす価値はあるだろうか?」と疑問を持つのは間違いだ。時間を費やさなかったせいで失うものは大きい。失敗を見過ごせば、学習も更新もできないのだ。
・解決策はふたつだ。1つ目は、自分の信念が間違っていたと認める方法。しかしこれが難しい。理由は簡単、怖いのだ。自分は思っていたほど有能ではなかったと認めることが。 そこで出てくるのが2つ目の解決策、否定だ。事実をあるがままに受け入れず、自分に都合のいい解釈を付ける。あるいは事実を完全に無視したり、忘れたりしている。

・外発的な動機より、自尊心を守りたいという内発的な動機のほうに支配され、間違った仮説から抜け出す唯一の方法は、失敗をすること
・失敗をすることは、正解を導き出すのに一番手っ取り早い方法というばかりでなく、今回のように唯一の方法であることも珍しくない。
・批判的なものの見方を忘れると、自分が見つけたいものしか見つからない。自分がほしいものだけを探し、それを見つけて確証だととらえ、持論を展開する
・進歩や革新は、頭の中だけで美しく組み立てられた計画から生まれるものではない。生物の進化もそうだ。 進化にそもそも計画などない。生物たちがまわりの世界に適応しながら、世代を重ねて変異している。
・我々は知らず知らずのうちに、目に見えるものを特定のパターンに当てはめて考え、そこにあとからもっともらしい解釈を付けて満足している。
人がもっともらしいと感じる説はシンプルだ。抽象的ではなく具体的で、偶然よりも誰かの才能・愚かさ・意図などが大きな役割を担う。起こらなかった無数の物事より、ほんの2、3の目を引く現象に目を奪われてしまう。とにかく間近に起こった特徴的な出来事なら何でも、後講釈の題材になり得る。
・失敗への恐怖。人は自分の失敗を見つけると、隠したり、はじめからなかったことにしたりする。しかし完璧主義者はいろんな意味でさらに極端だ。失敗をなくそうと頭の中で考え続け、気づけば「今欠陥を見つけてももう手遅れ」という状態になっている。これが「クローズド・ループ現象」である。失敗への恐怖から 閉ざされた空間の中で行動を繰り返し、決して外に出て行こうとし
・早い段階で試行錯誤するプロセスは、IT革命とともに現れた「リーン・スタートアップ」(小さく始める)というアプローチに通じる。その根本は非常にシンプルで、いわば検証と軌道修正の繰り返し。
・「○○をしなかったら、起こっていたかもしれないこと」は検証実験において「 反事実」と呼ばれる。
・現実は、曖昧でわかりにくい失敗のほうがずっと多い。成功に見えたものが実は失敗だったり、その逆もある。そもそも失敗かどうかがはっきりしなければ、失敗から学ぶことはできる。
・成功は、創造と検証の複雑な相互作用によってもたらされる。
・何かミスが起こったときに、「担当者の不注意だ!」「怠慢だ!」と真っ先に非難が始まる環境では、誰でも失敗を隠したくなる。しかし、もし「失敗は学習のチャンス」ととらえる組織文化が根付いていれば、非難よりもまず、何が起こったのかを詳しく調査しようという意志が働くだろう。
・適切な調査を行えば、ふたつのチャンスがもたらされる。ひとつはオープンな組織文化を構築する。問題を深く探って、本当に何が起こったのかを突き止めること。
・ビジネス、政治、航空、医療の分野のミスは、単に注意を怠ったせいではなく、複雑な要因から生まれることが多い。その場合、罰則を強化したところでミスそのものは減らせるが、不当に非難すればするほど、あるいは重い罰則を科せば科すほど、ミスは深く埋もれていく。すると失敗から学ぶ機会がなくなって、同じミスが繰り返し起こる。その結果、さらに非難が強まり、隠蔽体質は強化されてしまう。
・我々の脳には 一番単純で一番直感的な結論を出す傾向がある。この傾向には「根本的な帰属の誤り」という堅苦しい名前がついている。簡単に説明するとすれば「人の行動の原因を性格的な要因に求め、状況的な要因を軽視する。
・失敗から学べる人と学べない人の違いは、突き詰めて言えば、 失敗の受け止め方 の違いだ。成長型マインドセットの人は、失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとしてごく自然に受け止める。
・固定型マインドセットの子は、いともあっさりと自分の能力を過小評価し、 失敗を自分の知性のせいにしはじめ、資質があろうとも、やり抜く力がなければ、困難にぶつかって脱落してしまう。困難も成功への通り道だとは考えず、失敗から逃げてばかりになる。「やり抜く力」は、成長型マインドセットと密接に関連している。肝心なのは、 成功や失敗をどうとらえるか。
・我々が最も早く進化を遂げる方法は、失敗に真正面から向き合い、そこから学ぶこと
・一流のコーチは、ただ学習ができる環境作りをするのではなく、最も効果的なトレーニングができるように配慮する。同じスキルを磨くのでも、できるだけ速く、そして奥深く学ぶことを


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