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がんと『自分軸』②

先日、がん治療を受けるにあたって『自分軸』があると納得した治療が受けやすいですというお話しをさせていただきました。
とはいえ、その『自分軸』どうやって見つけていけばよいのでしょうか?

人間は1日に3万5千回も決断しているといわれています。
10年間で1億回!
無意識に決断していることもたくさん含まれるのでしょうけど、無意識とはいえ自分軸に沿って決断されているため、
自分軸は既に自分の中に存在しているわけです。

『自分軸』の中には二つのタイプがあります。
一つは、価値観型(こだわり)
もう一つは、ビジョン型(夢、希望)です。

それぞれもう少し詳しく見ていきましょう!
まずは、価値観型です。
自分にとって何が大切か?
どんなこだわりがあるからそうするのか?
例えば、「朝目覚ましが鳴ったので起きた」という事象においても
・目覚ましをかけない
・目覚ましが鳴っても起きない
・そもそも朝には起きない
という選択もできるわけですが、
・朝食はきちんととる方だ
・仕事に出かける前にはゆったりとした時間を満喫することにしている
・遅刻は絶対にしない!
などの「こだわり(価値観)」があるため、目覚ましで起きるわけですよね。

とはいえ、その日の状況や体調などによって、このこだわり(価値観)はブレることがあるわけです。
・朝食はきちんととる方だ
→二日酔いだから今日は朝食はいらない
・仕事に出かける前にはゆったりとした時間を満喫することにしている
→昨日寝たのが遅かったから、今日は少し長く寝て、朝のゆったり時間を削ろう
・遅刻は絶対にしない!
 →今日くらい遅刻してもいいかな?

「こだわり(価値観)がブレる」と表現しましたが、正しくはたくさんある自分のこだわりの中で、その状況で自分の都合がいいこだわりをその都度選択して使っているというのが正しいのかもしれません。
つまり、
『朝食はきちんととる方だ→二日酔いだから今日は朝食はいらない』においては
「朝食をきちんととって一日元気に過ごす」というこだわりよりも
「みんなとワイワイお酒を飲んで楽しい!」というこだわりの方が強く、
その結果、「一日くらい朝食食べなくてもいいから、今日くらいはお酒をたくさん飲んで楽しみたい!」という決断をしたということになるかと思います。

次に、ビジョン型(夢、希望)です。
夢や希望に向かって進んでいく!
どうなりたい?→だからこうする!
例えば、「オレは将来、社長になる!」という夢を持っている方は
・(いいかどうかは別ですが)寝る間も惜しんで働いたり、休日も勉強に充てたり
・社長になるための試練だと思って、誰もが嫌がるクレーム処理を率先してしたり
・一つポストが上がれば、一歩社長に近づいたと大きく喜んだり
とはいえ、何かの拍子に
「やっぱりオレ社長になれないかも・・」とか
「社長に向いてないかも・・・」とか考えてしまい、急にトーンダウンしてしまう時もあるかもしれません。
あれだけあったやる気もどこに行ったのか?毎日ボーッと過ごしてしまうようになってしまったりしてしまうかもしれません。

抗がん剤治療の現場で度々見かける光景として
「抗がん剤治療の副作用がつらいのでやめたいと思っているが、やめてしまえばがんは進行してしまうし、どうしたらいいだろう?」
というような場面があります。
・診察室に入る前まで、絶対に抗がん剤治療やめると決心していたが、担当医の顔を見たらいいだせなくなり、結局続けることにした
・家族に相談したら、私もサポートするから頑張って続けてほしいと言われ、続けることにした
・やめると言ったものの、やっぱりがんが心配だから、次病院に行った時には再開したいと言おう
などなど
診察に来るたびに、『やめる』、『つづける』、『別の治療をしたい』など方針が変わってしまう方が少なくありません。
今迷われている時なんだなぁ~と思いますが、時間は刻々と過ぎていってしまうため、いざ決断した時には状況が変わってしまい、ようやく下した決断の意味がなくなってしまう場合もあったりします。

決断に至る『自分軸』はあるはずなのに、やっぱり迷ってしまうんじゃ、『自分軸』なんて意味なくない?

これは、自分の中には確かな『自分軸』があるのですが、それらが明確になっていないために起こってきてしまっているのです。
自分の中にどんな『自分軸』があるのか?わかっているでしょうか?
また、それらの『自分軸』の中でも、優先順位があるのではないでしょうか?

このようなことが明確化されていないので、その瞬間瞬間の気分などで決断してしまうわけです。

先ほどの「抗がん剤治療の副作用がつらいのでやめたいと思っているが、やめてしまえばがんは進行してしまうし、どうしたらいいだろう?」の場合

●価値観型の場合
抗がん剤治療を受けた後の数日間は、たくさんの副作用が身体に襲いかかり、ほぼ一日中つらくて寝ている状態なのかもしれません。このときは、「もう抗がん剤なんてまっぴらごめん」「絶対にやめる!」と思っています。
とはいえ、もう数日経過すると徐々に副作用が抜けてきて、それにつれて元気も回復してくる。次に病院に行く頃にはほぼ副作用も抜け普段通りの状態です。あれだけ「抗がん剤治療やめる!」と思っていた気持ちも薄れ、いざ診察室に入った時には「もう少し頑張ってみます・・・」となってしまう。
時には病院に行く頃でもまだ副作用が続いており、つらさも残っている状態。そんなときには診察室で「やっぱりつらいので、抗がん剤治療をやめます!」となるかもしれません。
でも、いったんお休みするとこれまで続いていた副作用がだんだん抜けてきて、体調も回復してきます。そうなってくるとやっぱり『がん』が心配になり、次に病院に行った時には「また、抗がん剤治療頑張ってみたいと思います!」となったりします。

●ビジョン型の場合
「私は、この治らないといわれているがんになんて負けない。絶対に治るんだ!子供の成長も見守りたいし、孫の顔だって見たい。まだまだ死んでなんかいられない。だから抗がん剤治療もがんばる。」
こうは思って始めた抗がん剤治療であっても、想像以上の副作用のつらさにくじけてしまいそうになるかもしれません。
「どんなに頑張っても、やっぱりがんは治らないだろうし、こんなつらい思いしてまで抗がん剤治療受ける必要があるんだろうか?」
「やめてもいいよね?私、頑張ったよね?」
とはいえ、子供の笑顔を見ていると、「この子のために、やっぱり抗がん剤がんばろう!」って気持ちになってきます。

どちらのタイプもあるあるです。
どちらが正解というわけではないと思います。
最終的には、本人が納得して選択ができれば、それが正解です。

あなたにとって
「何が大事?」
「どうなったらいい?」
「何の制約もなかったら、なにがしたい?」

こう問いかけてみてください。

決して
「何が大事?」
         →抗がん剤治療を行うことが大事
「どうなったらいい?」
        →どんなにつらくても、少しでも長く抗がん剤治療を続けたい
「何の制約もなかったら、なにがしたい?」
        →抗がん剤治療
なんていうことはないでしょう!

『豪華客船で100日間、世界一周旅行に行きたい』
けど、「がん」の私じゃむりでしょ?
無理かどうかはわかりません。
病状(がんの大きさや拡がりなど)にもよりますが
100日間くらいなら抗がん剤治療を休止しても大丈夫かもしれません。
内服抗がん剤に変更すれば、船の中でも続けられるかもしれません。
主治医が同行して、船旅をサポートしてくれるなんてこともあるかもです。

そんな大層な夢・希望じゃなくてもいいんです。
『一日一日、家族と笑顔で過ごしたい』
『夫が仕事に行くときに、寝ているのではなく、玄関でお見送りしたい』
『子供のお弁当を毎日作ってあげたい(今は味覚障害でうまく作れない)』

あなたにとって大切なこと、したいことが決まれば
抗がん剤をやめる?続ける?だけの選択肢以外に、
・少し休んでみましょうか?
・別の抗がん剤変に更してみましょうか?
・一種類だけ休んでみる?
などなど、その目標を到達するための選択肢がたくさん提示されるかもしれません。

今までは
提示された抗がん剤=担当医の軸(他人軸)に、自分軸をあわせていたから苦しかったんだと思います。

これからは、自分軸に抗がん剤治療(他人軸)の方をあわせることを考えてみてはいかがでしょうか?
きっと今よりも納得感の高い治療が受けられるはずです。

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