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コーチング脳で『がん医療』を考える⑥

コーチング脳で『がん医療』を考えるシリーズも、今回で6回目!

あなた自身も気がついていない「本当の目的」について考えていきましょう。

宮越大樹さんの著書『人生を変える!「コーチング脳」のつくり方』(ぱる出版)を教科書として、『がん医療』にコーチングを応用する方法について考えておりますので、まだ本書をお読みでない方は是非とも読んでみてくださいませ。

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▼あなたの行動の裏にある「隠された目的」
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行動には何らかの目的が必ずあります(と考えます)
「抗がん剤治療をうける」という『行動』には、「●歳まで生きたい」という『目的』がありますね。
時々、「自分はもう充分長生きしたからこれ以上の長生きは不要」とおっしゃりながら抗がん剤治療を受けに来る方がいらっしゃいますが、そのような方でも「家族の期待に応えたい」という『目的』があるのだと思います。
そしてここからが重要なのですが、その『目的』のさらに奥に『本当の目的』があると考えて、その『本当の目的』とやらを明らかにしてみませんか?

さらに、その『本当の目的』から、『行動』を再度選択してみてはどうでしょうか?
というのがアドラー心理学でいう『目的論』です。

『目的論』の反対は、『原因論』です。
「がん」になってしまったから、「がん」を治すというのが『原因論』的な発想となります。
その「がん」が手術などで治せる場合には『原因論』で問題がないことも多いのでしょうが、
前回書いたように
●胃がんで胃を切除したら、食事量が大幅に減ってしまった
●直腸癌で人工肛門になり、その処置にとても苦労している

などなど、「がん」は治ったものの想定していたものと異なる状態になり困惑してしまうこともままあります。
また、診断された時点でステージ4であったりすると、そもそも「がん」自体を治すことが難しい場合も多いです。このような場合、『原因論』では歯が立ちません。

「抗がん剤治療をうける」という『行動』の目的は「▲歳まで生きたい」「あと5年は生きたい」ということが多いと思います。
では何故その歳まで生きたいのか?
・両親が▲歳で亡くなったから、せめてその歳までは生きたい
・がんといえば「5年生存率」だし、せめて5年くらいはね
・急にがんといわれて・・、心の準備もあるし・・、もうしばらくは時間がほしい
では、その期間生きられたらどうなるのか?
・両親の歳まで生きられたら満足?
・5年生存率数%といわれて、5年生きられたら満足?
・心の準備は整いましたか?
このように、自分の選択した『行動』の目的を深掘りしていってみますと、いかがでしょうか?
この目的って、本当に達成したい目的なのだろうか?
達成できたら嬉しい目的なのだろうか?
と気がついたりできます。
「両親の歳まで生きる」は、「失敗しない」とか「安定すること」などが目的と言えそうです。
「5年生存率達成」は「人から認められること」が目的になってしまっているかもしれません。
「心の準備」は「恥ずかしい思いをしない」と言う気持ちがベースになっているかもです。

もちろん、「人から認められること」とか「失敗しない」「恥ずかしい思いをしない」などの目的が悪いというわけではありませんが、これらの目的を目的としてしまうと、自分自身が本当に大切にしたいことに気がつけなくなってしまうかもしれず、それがもったいないのではありませんかということです。
「人から認められること」などのような、自分の選択した『行動』の隠れた目的に気がつくことができたとき、僕も含め多くの方が「ハッ」とし、夢から覚めたような感覚を覚える方もいるようですし、自然と笑ってしまうような反応を示す方も多いようです。

このように、自分自身に何が起こっているのか?なぜこの行動を選択したのか?などに気がつくことで、改めて自分の本当の目的を探すチャンスが巡ってくるわけです。

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▼何が自分の人生なのか?本当の目的に気づき、生きる
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とはいえ、急に「本当の目的」を見つけてみましょう!といわれても困ってしまうと思います。
例えば、5年生存率が10%と言われる種類の「がん」になって、5年生きることを目的にするのは、これまでの話から「本当の目的」ではないのはお分かりかと思います。

だからといって、「本当の目的」がすぐにわかるわけではありません。

「本当の目的」は、その人が人生で大切にしたいことや欲しいもの(得たいもの)から出てくるものなのだと思いますが、その規模はひとそれぞれ、大小さまざまです。

とはいえ、アドラー心理学的には、「自己実現」「社会貢献」の二つが人生における重要な目的と考えられていますので、これらにつながるような「本当の目的」を見つけてもらえるようにサポートしたいと考えています。

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▼自己実現とは?
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「自己実現」とは、成功して他人から認められることではありません。
ですので、「5年生存率数%といわれたけど、5年生きられた!」は、自己実現できたとはいわないということです。
自己を実現するとは、自分自身が心から望んでいることに従って日々過ごし、自分の理想とする存在に近づいていく生き方であるとされています。
『生き方』ですので、結果ではなく経過(プロセス)が重要ということです。

「5年生きられた」という結果ではなく、「どういう5年を過ごしたか」というプロセスが大切で、「理想の自分に少しでも近づけたか?」がプロセスの評価基準です。
つまり「理想の状態」を設定する必要があるわけですが、それはその人の価値観によるところが大きいです。
そして、その価値観は「がん」になったことで大きく変わるかもしれません(変わらないかもしれません)。

「がん」になってしまった今だからこそ、「本当に何を大切にしたいか?」を考える好機だと僕は思います。
普段はどうしても「本当に何が大切?」って尋ねられても、周囲の目を気にして当たり障りのないようなことを言ってしまったり、誰かの迷惑になるだろうと考えてその思考をボツにしてしまったりしがちだと思います。
そういうリミッターを外して考えることは本当に難しいと僕自身感じていますが、「がん」になってしまったとなれば話は別ではないでしょうか?

もしこの「がん」で命を落としてしまうとしたら、残りの時間で何をしたいか?
他人のこと、家族のことよりも、まずは自分が何をしたいか?
そういうことが考えやすい状況であることは間違いないと思います。
そして、そのように自分が大切にしたい人生を過ごしてもらえれば、きっと家族も喜んでくれるのではないでしょうか?僕はそう思います。
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▼「自己実現」と「社会貢献」は両立する
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「社会貢献」も重要な人生の目的です。
私たちは基本的に誰かの役に立ちたいと思っています。
ヒトは社会から切り離されて生きていくことができませんから、社会に自分の居場所があることを感じられると安心感が得られます。
社会に居場所があるとは、自分に役割があり、人の役に立てているということで、このように感じられたとき幸せを実感できるとされています。
逆に、居場所がなくなることを恐れ、自分を犠牲にしてでも居場所を確保しようとしてしまいがちです。
もしかしたら、そのような気持ちが強く、慢性的なストレスとなってしまい、「がん」につながってしまったのかもしれません。
ですので、これからは自分を大切に過ごしてもらいたいと思います。
「自分を大切にしたら社会貢献にならないんじゃないの?」って考えるかもしれませんが、がん患者さんが自分を大切にして過ごしていたら、それだけで周囲の人へ「自分をもっと大切に過ごしなさいよ!」っていう素敵なメッセージになると僕は思います。
そのうえで余裕があれば、自身の体験談を話すなどで、同じような苦い経験をする人を減らすよう尽力したりなどのより大きな社会貢献をしてみてもいいかもしれません。
現代では、がん患者さん自身がその経験をTwitterなどのSNSで共有することで、多くの方が勇気づけられているように感じています。

このように、「自己実現」と「社会貢献」が両立できることがその人の幸せにつながると思いますし、人生の目的だと考えています。

とはいえどのような方法をとるかは、人それぞれ異なります。
そしてどのような方法がいいのかの答えは、あなた自身にしかわかりませんが、コーチングを通じて答えに近づくお手伝いができればいいなぁ~って僕は考えています。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

“コーチング脳で『がん医療』を考える”シリーズ⑥はいかがでしたでしょうか?
何か参考になることがありましたら嬉しいです。
次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

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