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がんと『人生会議』その2

前回は、『人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)』とはどんなものかに関してお話しさせていただきました。
少しご興味を持っていただけましたでしょうか?
今回は、じゃあ、実際にはどうやるの?についてお話ししていきたいと思います。

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▼人生会議の大まかな流れ
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『人生会議』は、次の5つのSTEPで行っていきます。
それぞれのSTEPは後でもう少し詳しく説明いたしますが、まずは大まかな流れを捉えていただきたいので、ざっと書き出してみます。
STEP1:大切にしていることを考える
STEP2:代理人を選ぶ
STEP3:質問する、調べる
STEP4:話し合う
STEP5:書き留めておく

日本人の多くは「完璧主義」なので、実際にこれらを考え始めるとあれもこれも思い浮かんでしまい収拾がつかなくなってしまったり、考えたことが本当にこれで正しいのかと熟考するあまり結局決めきれなかったりしてしまうかもしれません。
しかし、自分の考えなんて、その時の心境や健康状態、よく話す人の意見やテレビで見たこと聞いたことでコロコロと変化していくのが当然です。
ですので、さしあたり現時点では「こんな感じかな」くらいでOKだと思います。
そして、少し時間が経ったり、何か状況が変わった時などに再度STEP1から考え直していけば良いですし、逆に言うと何度も繰り返して考えていくことが大切ともされています。
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▼STEP 1:大切にしていること
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「あなたが大切にしていることは何ですか?」
と聞かれて、即答できる人はそうそういないと思います。
やっぱりお金かな?とか命(いのち)かな?とかいう回答が多く出てきそうな気がしますが
今回は『人生会議』ですので
■もし生きられる時間がそう長くはないとしたら
という前提で、その上で大切にしていることを考えていってほしいと思います。
生きられる時間が限られるとなるとなおさら「命(いのち)」が大切になってくるかもしれませんが、それはないものねだり。今回は「命」以外で考えていく必要があります。
そうすると「お金」も、天国には持って行けないしとなり、大切なものからはずれる可能性が高いかもしれません。
もちろん、自分は使えなくとも残された家族が困らないだけの「お金」を残したいとお考えになる方も多いかと思いますが、その場合「大切なもの」は「お金」ではなく「家族」なのかもしれませんので、
「なぜそう考えたのか?」もメモとして残しておくと良いかもしれません。
「お金」を家族に残すにしても、まさかギャンブルで・・・なんて方はいらっしゃらないと思いますが、
残りの時間のほとんどをお金を稼ぐことに使ってしまって良いのか?
それであれば、仕事はそこそこにして、家族と過ごす時間を沢山とるようにした方が良くないだろうか?
とはいえ、自分が寝たきりになってしまった時に、家族に負担をかけたくもないから、その辺りも事前に考えておかないとな。
などなど
ひとつ「大切なもの」を決めてそこで終了とせず、折角の機会ですからそれを起点に、色々と考えを拡げていってみましょう!
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▼ここ数年の思い出を振り返る
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自分が大切に思っていること、好きなことがすぐに思いつかない時は
ここ数年の思い出を振り返ってみましょう!
あの時は楽しかったなぁ~とか、充実していたなぁ~と思える出来事を中心に思い出してみましょう。
何かしらそのようなことが思い出せたら、さらに詳しく思い出してみましょう。
いつ、どこで、誰と、何を、どのようにしたか?
その時撮影した写真があれば、それを見ながらでも良いでしょう。
一人で思い出すのが難しければ、一緒に行った人に聞いてみてもいいかもしれません。
ある程度具体的に思い出せたら、次は
「それの何が」楽しかったのか?充実していたのか?
その出来事のエッセンスを考えてみましょう。
・新しい人や場所に巡り会えたこと
・親しい人と時間を忘れて過ごせたこと
・ゆっくりできた。時間を気にしないで済んだこと
・計画性がなく、驚きに満ちていたこと
人それぞれ、思うことは異なりますから、正解はありませんので、
自分がどう感じたのが良かったのか?をじっくりと考えてみてください。
時間はたくさんあります。
そして、その『良かったこと』を日常生活に増やしていけるようにしてみることが、大切なことの可能性がありますので、まずはその辺りからトライしてみることをオススメいたします。

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▼大切なことなんか、何もない!!
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中には、「家族や友達もいないから、特に大切なものはないよ」と答える方もいらっしゃるかもしれません。
でも、本当に大切なものはないのでしょうか?
大切なものがすぐに思い浮かばない時、逆にこれだけは避けたい、嫌だというものから考えると近道かもしれません。
がん患者さんの多くが「最期は痛くないように」とおっしゃいます。
「痛い、痛いといいながら最期を迎えるのは嫌だ」という気持ちは誰にでもあると思います。
とはいえ、時々「モルヒネ(麻薬)は絶対に使いたくない」と言う方もいます。
本当に痛くなってしまい、モルヒネ(麻薬)を使用せざるを得ない状況となったとき、この相反する考えのどちらを優先するのか?は本人にしかわかりません。
また「趣味が続けられなくなるのは困る」という方も多いです。
模型や人形作り、編み物など、指先の器用さが求められるような趣味の場合、抗がん剤治療の副作用で難しくなってしまうことを多々経験しますが、
①もし全くできなくなってしまっても抗がん剤治療の効果を最大限に求めるために、治療を続けるのか?
②できなくなってしまったら非常に困るので、治療の効果が多少低下しようとも休止や薬剤変更をするのか?
①と②どちらの選択にするかは担当医には決められないので、やはり自分である程度考えておく必要があります。
一方、避けたくても避けられないこともあります。
例えばがんが進行してくると徐々に体力が低下してきてしまい、畑仕事などの身体を使う作業は自然と難しくなってしまうことが多いです。畑仕事を生きがいにされていた方が、体力の低下のため、それができなくなってしまい、とても深く落ち込んでしまう患者さんをよくみます。また、現在は畑仕事をする体力があるが、収穫の時期にどうなっているかわからないから、種をまくのをやめたという方も度々いらっしゃいますが、かといって他にやることが急に出てくることも少なく、何となく手持ち無沙汰で過ごされているように感じられ、種をまいた方がよかったのではないか?と思うことが少なくありません。
種をまいた方が良かったのか?
まかない方が良かったのか?
半年後どうなっているかなんて、誰にもわかりませんので、僕に「どちらがいいか?」と質問されたら、「是非、まきましょう」と答えることにしています。

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▼まとめ
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人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)を具体的にどう行っていけばいいのか?
実践編ですが、5つのSTEPのうちの一つ目で今回は終了です。
残りの4つのSTEPに関しても順次お届けしていければと考えております。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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